研究課題
ストレスによる性ホルモン分泌異常の神経性機序を解明する目的で、交感神経活動亢進が性ホルモン分泌に及ぼす影響を検討してきた。これまでに、卵巣からのエストラジオール(E2)分泌速度が、卵巣交感神経の電気刺激により約50%減少すること、さらにストレス時(皮膚侵害性刺激時)には卵巣交感神経活動亢進を介して減少することを示してきた。本研究のH27年度・H28年度においては、性ホルモン源としての重要性が近年注目されてきている副腎皮質デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)に着目し検討を進めた。その成果として、副腎皮質からのDHEA分泌速度を直接測定する方法を確立させ、副腎支配交感神経が含まれる大内臓神経の電気刺激が副腎皮質からのDHEA分泌を約30%減少させることを明らかにした。H29年度は、ストレス時の性ホルモン分泌減少反応に、統合中枢として重要視されている視床下部が必須であるかを、除脳動物を用いて明らかにすることを目的とした。実験には、交感神経による抑制性分泌調節をより強く受ける卵巣E2について検討するために、麻酔下ラットの卵巣静脈に挿入したカテーテルから、卵巣静脈血を間欠的・経時的に採取し、血漿サンプル中のE2濃度と卵巣静脈血漿流量からE2分泌速度を求めた。中枢神経無傷ラットにおいて、身体的ストレス刺激として行った脛骨神経求心性電気刺激は、卵巣交感神経活動を増加させ、卵巣からのエストラジオール分泌速度を34%減少させた。これらの反応は除脳ラット(視床下部以上の高位中枢を除去)でも観察されたが、脊髄ラット(脳幹以上の高位中枢を除去)では消失した。これらの結果により、身体的ストレス刺激時の性ホルモン分泌減少反応の主な統合中枢は視床下部ではなく脳幹に存在することが明らかとなった。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Autonomic Neuroscience, Basic and Clinical
巻: 206 ページ: 63-66
10.1016/j.autneu.2017.05.011.