研究実績の概要 |
雄性C57BL/6Nマウスでの自己免疫型I型糖尿病モデルマウスに八味丸料エキス(1 g/kg)を連日48日間経口投与後(1日1回)、肺組織を採取した。本肺組織を用い、免疫関連因子群の遺伝子発現解析を行った結果、正常マウスと比べ高血糖モデルマウスの水投与群でTリンパ球(CD3e mRNA)およびナイーブBリンパ球マーカー(B220 mRNA)の発現低下が認められ、八味丸煎剤投与によって有意な回復が観察された。さらにTリンパ球の移送に関与する接着分子の発現を検討した結果、P-selectin (CD62P) mRNAの有意な発現増強が観察された。また、先天性感染防御因子群についての検討から補体第一成分(C1q)のmRNA発現の増強は認められたが、SurfactantDなどの他の因子のmRNAの発現の著明な変化は観察できなかった。一方、一般に炎症性に働くとされるAngiotensinⅡ受容体(AT1a)のmRNA発現が八味丸煎剤投与群でより顕著に増強されていることが明らかとなった。そこで、自己免疫型高血糖モデルマウスの解剖3日前からウイルスRNA(PolyI:C)を25μg/mouseにて肺接種した高血糖のウイルス性肺炎症モデルマウスを作製し、得られた肺組織及び気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いた検討を試みた。その結果、BALF中の好中球マーカーのmyeloperoxidase (MPO)活性は水投与群で有意に上昇し、八味丸煎剤投与で有意に抑制され、肺への好中球の浸潤による肺炎が改善された可能性が考えられた。さらに、肺組織を用いた免疫関連因子の遺伝子発現変化についての検討から、感染防御に関係するとされるTNF-α, IL-1β, IFN-γやG-CSF のmRNA発現は顕著に八味丸煎剤投与群で上昇していた。
|