研究実績の概要 |
【目的】経頭蓋超音波ドップラー(TCD)より得られる指標及びbaPWVとMRI及び脳血流SPECTより得られるアルツハイマー型認知症の指標(VSRADのZスコア、海馬血流量)との関係を比較検討した。 【対象と方法】対象は杏林大学病院もの忘れセンター初診患者90名のうち、MRI画像上で大梗塞の認められない81名(男性50名、女性31名、平均年齢77±7歳)。初診時に脳血流SPECT検査、頭部MRIによる画像診断とbaPWVの測定に加えてTCD検査を行い、中大脳動脈の平均脳血流速度(MCAVmean)、収縮期脳血流速度(MCAVsys)、拡張期脳血流速度(MCAVdia)、 Pulsatility Index(PI)、脳血管コンダクタンス(CVCi)、脳血管レジスタンス(CVRi)を評価した。 【結果】年齢、性別で調整を加えた重回帰分析の結果、海馬の萎縮度を表わすVSRADのZスコアはCVCi(β=-0.289, p=0.016)及びCVRi(β=0.317, p=0.006)と有意な相関を示した。同様に年齢、性別で調整を加えた重回帰分析の結果、左右の海馬血流はMCAVmean(左:β=0.365, p=0.0007,右:β=0.363, p=0.0007)、MCAVsys(左:β=0.278, p=0.011,右:β=0.323, p=0.003)、MCAVdia(左:β=0.374, p=0.0005,右:β=0.384, p=0.0003)、PI(左:β=-0.258, p=0.018,右:β=-0.261, p=0.017)、CVCi(左:β=0.323, p=0.003,右:β=0.288, p=0.009)、CVRi(左:β=-0.371, p=0.0007,右:β=-0.297, p=0.007)すべてと有意な相関を示した。同様の重回帰分析でbaPWVはVSARDのZスコア、海馬血流と有意な相関は示さなかった。 【結論】TCD検査によって得られる脳血流動態および頭蓋内動脈硬化の指標はアルツハイマー型認知症でみられる海馬萎縮や海馬血流の低下と関係していることが示された。TCD検査で得られる指標はbaPWVよりアルツハイマー型認知症の発症と関係が強いと考えられる。
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