研究実績の概要 |
【目的】経頭蓋ドップラーの指標及び動脈硬化の指標(baPWV)と認知症に関する指標との関係を明らかにする。 【対象と方法】杏林大学病院もの忘れセンター初診患者の内、MRI画像上で大梗塞の認められない554名(男性223名、女性331名、平均年齢79±6歳)を対象とした。初診時に認知機能(MMSE)、脳血流SPECT、頭部MRI、baPWV、TCD検査を行い、中大脳動脈の平均脳血流速度(MCAVmean)、Pulsatility Index(PI)、脳血管コンダクタンス(CVCi)を評価した。 【結果】年齢、性別で調整を加えた重回帰分析の結果、MMSEはMCAVmean(β=0.256, p<0.0001)、CVCi(β=0.144, p=0.011)と有意な相関を示した。VSRADのZスコアはMCAVmean(β=-0.205, p<0.001)、CVCi(β=-0.289, p<0.0001)と有意な相関を示した。海馬血流はMCAVmean(β=0.211, p<0.0001)、CVCi(β=0.183, p=0.001)、PI(β=-0.140, p=0.022)すべてと有意な相関を示した。PVHはMCAVmean(β=-0.269, p<0.0001)、CVCi(β=-0.225, p=0.01)と有意な相関を示した。DWMHはMCAVmean(β=-0.233, p=0.001)、CVCi(β=-0.206, p=0.004)と有意な相関を示した。baPWVはこれらの指標と有意な相関は示さなかった。 【結論】TCD検査によって得られる脳血流動態および頭蓋内動脈硬化の指標は認知機能、アルツハイマー型認知症でみられる海馬萎縮や海馬血流の低下、及び大脳白質病変と関係していることが示された。TCD検査で得られる指標はbaPWVより認知症の発症と関係が強いと考えられる。
|