高濃度ビタミンC(L-AA)は、in vitroでは過酸化水素を発生させ多くの腫瘍細胞に優れた抗腫瘍効果を発揮するが臨床的には効果が発揮されない場合が多く報告されている。この乖離が鉄イオン濃度の差異によって起こる可能性があると考え本研究を実施した。 これまでに白血病細胞株を皮下移植した免疫不全マウスモデルの実験において、L-AAとFesin(鉄)を併用することにより、L-AAの抗腫瘍効果が抑制されることを確認した。また体内鉄分量を減じる目的で低鉄飼料により飼育し、さらに瀉血と鉄キレート剤であるdeferasiroxを投与することで血中Ferritin を減少させた実験においては、L-AAの抗腫瘍効果が顕著に増強したことを確認した。 メカニズム解析として以前に、L-AAがNF-κB活性化の阻害を介してHIF-1αの発現を抑制することにより白血病細胞の増殖を阻害することを実証していおり、過剰鉄がNF-κBの活性化にも影響するか否かを検討した。その結果、L-AAは白血病細胞におけるNF-κBの活性化およびHIF-1αmRNA発現を阻害し、IκBのリン酸化を抑制することが認められたが、Fesinの添加によりキャンセルされた。さらにFesinにより白血病細胞内のL-AA濃度が減少することを確認した。 また、Fesin添加時にみられていた分子の変化は、deferasiroxを処理することにより消滅し、白血病細胞内のL-AA濃度は回復することを確認した。 これらの研究では、過剰鉄がL-AAの抗白血病効果を抑制し、鉄が過剰に存在すると癌細胞の増殖を促進させる可能性があることを示唆するものである。体内鉄分量を低減させることで、難治性悪性腫瘍に対する高濃度ビタミンC療法の効果を増強できる可能性が期待できる。現在、これらを論文にまとめ投稿中である。
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