研究実績の概要 |
以前の研究で行った開腹モデル(Sham群 n=8)、胆管結紮モデル(NT群 n=12)、柴苓湯内服モデル(SRT群 n=11)の3群に加えて、新たに茵ちん蒿湯内服モデル(ICKT群n=9)、茵ちん蒿湯と柴苓湯を併用内服モデル(SRT+ICKT群 n=9)を加えた5群での比較検討を行なっている。 ①血液検査において、肝機能の指標であるAST,ALT,T-Bil, D-Bil, ALPの測定を行った。 ②RT-PCRにて肝臓内AP-1, TIMP-1, AQP1,AQP8,AQP9,AQP11を比較した。 ③病理学的評価では「細胆管の増生」、[線維化]、[炎症]、[NF-kB]の4項目で評価した。[細胆管の増生] 0:細胆管の増生がないもの, 1:細胆管の増生が門脈域に限局して見られるもの, 2:細胆管の増生が門脈域を超えてわずかに小葉内に及ぶもの, 3:細胆管の増生が門脈域から小葉内に広く及ぶもの,と区分した。[線維化] 線維化はMasson tricrome染色にて評価した。0: 線維化がないもの, 1: 門脈域の線維性拡大があるもの, 2: 小葉内まで線維帯の伸展があるもの, 3:小葉構築の改変があるもの, と区分した。[炎症] 0:炎症細胞の浸潤がほとんどないもの, 1:炎症細胞の浸潤が門脈域を主体にみられるが、interface hepatitisがないもの, 2: interface hepatitisを伴うもの, 3: 小葉内に広く炎症細胞の浸潤が見られるもの,と区分した。[NF-kB] NF-kB (CST, NF-κB p65 (D14E12))を用いて免疫染色を行った。0:発現がないもの, 1:1-10%の細胞に発現見られるもの, 2:11-50%の細胞に発現が見られるもの, 3:51%以上の細胞に発現が見られるもの、と区分した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液検査では、NT群とSRT群ではALT, T-Bil, D-BilはSRT群が有意に低下し、血液学的検査所見では柴苓湯による肝機能異常の改善が認められていた。ICKT群とSRT+ICKT群はよりNT群と比較して有意に低下した。一方でT-Bil, D-Bilは有意な低下は認められなかった。 RT-PCRでは、AP-1, AQP1は5群に差は認められなかった。しかしTIMP-1, AQP8,AQP9,AQP11はSham群と比較するとNT群とSRT群が有意に低下していた。しかしNT群とSRT群には有意な差は認められなかった。AQP9,AQP11はICKT群とSRT+ICKT群はNT群とSRT群と比較して有意な発現を認めていた。 また新たにRT-PCRにてNf-kBを比較したところSRT+ICKT群はNT群とSRT群と比較して有意に発現が低かった。 RT-PCRの時点では明らかな柴苓湯の影響は認められなかったが、茵ちん蒿湯はAQP9,AQP11の発現を上昇させ、Nf-kBの発現を低下させることが認められた。 このことから茵ちん蒿湯による炎症反応の低下をきたすことでAQP9,AQP11に何らかの作用をしていることが考えられた。 病理学的検査では、「細胆管の増生」、NT群、SRT群、ICKT群、SRT+ICKT群の4群に有意な差は認められなかった。[線維化]、NT群、SRT群、ICKT群、3群に有意な差は認められなかった。SRT+ICKT群はNT群、SRT群と比較して有意に線維化が少ない傾向にあった。[炎症]、NT群、SRT群、ICKT群、SRT+ICKT群の4群に有意な差は認められなかった。[NF-kB] SRT+ICKT群はNT群、SRT群、ICKT群と比較して有意にNF-kBが少ない傾向にあった。
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