研究課題
前年度までの検討から、食道扁平上皮癌(ESCC)で癌促進型RBPとして機能するTIA1aが、1)発現異常は転写誘導因子の発現異常や機能異常によること、2)自身のリン酸化修飾によって細胞内局在が制御されることを見いだした。本年度は、TIA1a発現異常の背景にある分子機序とTIA1aの癌促進機能に対する効果的な介入法を明らかにするため、以下の研究を行った。1)抗TIA1抗体で免疫沈降を行い、TIA1と結合する蛋白質を質量分析で同定した。TIA1のリン酸化修飾に関与するキナーゼを同定することはできなかったが、複数のRBPを同定した。また、リン酸化部位のアミノ酸配列より、リン酸化キナーゼを予測したところ、複数のキナーゼが同定された。これらに対する特異的阻害剤やsiRNAを用いて検討した結果、細胞質TIA1aが核内に移行し、細胞増殖が抑制された。以上の結果から、同定したキナーゼを治療標的とすることで、TIA1aのがん特異的機能を抑制する可能性が示唆された。2)前年度に同定したTIA1のリン酸化修飾部位を含む細胞膜透過型合成ペプチドを設計し、TIA1a発現細胞に投与したところ、細胞質TIA1aを核内に移行することができた。しかしこの効果は限定的であったため、さらなる検討が必要と考える。3)初年度に同定したTIA1標的mRNAに関して、ビオチン化したRNAプローブを作成し、1)で同定したRBP及びTIA1の結合領域をビオチンプルダウン法で決定したところ、複数の癌関連miRNA(miR-200c、miR-19など)の結合配列と一致したことから、TIA1はこれらのRBPやmiRNAと相互作用することで標的mRNAの発現を調節していることが示唆された。
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