研究実績の概要 |
我々はMALDI-TOF-MSを用いた先行解析研究においてNm23-H1の細胞内標的分子候補を検索し、種々の分子を見出してきた。本年度は標的分子のうちG3BP2及びG3BP1分子に焦点を絞りその詳細について解析を進めた。G3BP2及びG3BP1分子はこれまで、すい臓癌、乳癌の悪性度との関連が示唆されていたが我々は、柳原博士により樹立されたスキルスタイプ胃がん細胞株HSC39からNm23-H1の標的分子として見出した。このことから、G3BP1、G3BP2分子が胃がんにおいてもその発現が認められるかを、種々の胃がん細胞株と高転移性・高浸潤性を示すスキルスタイプ胃がん細胞株で比較検討した。その結果① G3BP2分子はスキルスタイプ胃がん細胞株(HSC39, 58)や高分化型腺癌細胞株(HSC57)において発現していることを確認した。これは先のマウスにおける転移・腹膜播種能確認実験の結果と一致していたことから、G3BP1, G3BP2分子が高浸潤・高転移性に関わっていることが示唆された。しかし、ヒトの臨床検体での確認・検討にまで至らず、本研究が残した今後への宿題である。さらに、両分子間相互作用について検討したところ、② in vitro , in vivoにおいてNm23-H1分子とG3BPの3つのファミリー分子各々は物理的な結合性を示し、③ 核移行ドメインを有する各G3BP分子と細胞質に優勢的に局在するNm23-H1の結合性が細胞内においては、細胞質に広く共局在していることを確認した。特筆すべき点はG3BPの3ファミリー分子(G3BP1, G#BP2a, G3BP2b)の各単独発現では大きな違いは認めなかったが、Nm23-H1との共発現細胞ではG3BP1だけが大小多くの粒子を形成し細胞質全体に広がり、G3BP2分子とは異なっていた。G3BP1がストレス顆粒形成と関連していることから、Nm23-H1との共発現がストレス刺激となって形成された可能性が考えられた。
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