研究課題/領域番号 |
15K08952
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
水田 洋 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (70527605)
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研究分担者 |
竹内 啓晃 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (90346560)
小野 正文 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (70304681)
西原 利治 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (60145125)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ |
研究実績の概要 |
ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)は慢性持続感染を経て、消化管のみならず様々な疾患・病態に関与している。しかし菌株の解析結果と罹患率や有病率(地域や個人差間)のエニグマは解明されていない。ピロリ菌は感染後に個々の胃内(部位)にて著しい遺伝子変異(high genetic diversity)を繰り返し、種々の変異株を創出しながら集団として存在し全体の遺伝子プールを有効利用することで慢性持続感染を成立させ、薬剤耐性菌の出現をはじめ多彩な病態に関与すると考えられる。すなわち、本菌感染は単クローンではなく、silent majorityやnoisy minority株の存在と役割(細菌特性・生物多様性)で構成された細菌叢(ピロリ菌フローラ)と捉えて、宿主免疫応答を解析し関連疾患・病態の解明を目的に本研究を推進したが、今年度研究成果を発表するには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.胃内慢性持続感染におけるピロリ菌フローラ形成機序とその生物学的役割 本菌の初感染時は単クローンと仮定しても、胃内環境の変化に応じて出現した変異株を含む細菌叢(ピロリ菌フローラ)として慢性持続性感染が成立し、細菌-宿主間相互反応(免疫応答)を経て多彩な病態に関与すると考えられる。これらの形成には本菌のhigh genetic diversityや生物種固有の種の保存メカニズム(細菌プログラム死:PCD)が関与すると考えているが、ピロリ菌のフローラ形成過程(本菌の細胞増殖・分裂・形態維持機構(PCD機構含む)から変異株創出)を解析し、慢性持続感染におけるピロリ菌フローラの生物学的役割を解明した。 2.遺伝子多様性(変異株出現)によるピロリ菌フローラ形成と疾患との関連 研究分担者の竹内らは「ピロリ菌感染と病原性」に関し幾つもの知見を明らかにしているが、接着因子BabAやSabAの発現(遺伝子変異)の有無が慢性萎縮性胃炎や胃癌の発症に重要な役割を果たすこと,またピロリ菌の遺伝子多型が胃炎の重症度や薬剤感受性と関連性を示すことを証明し、野生株のみでなくそこに存在している他の変異株(フローラ)に注意を払った解析が病態解析には重要と考えられる。これらを踏まえ、多数の菌株を収集しピロリ菌フローラ形成を検証し、各種疾患との関連性をフローラ形成と遺伝子型クラスター分類にて解析する。 特に、持続感染・病原性・薬剤耐性等に関わる各遺伝子を中心に遺伝子変異および活性等について病変との関わりについて比較解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に実施した研究から得られた 変異遺伝子のフローラ形成や生物学的役割(慢性持続感染や宿主免疫応答)を検証するため、必要に応じてそれら遺伝子を操作した株(正常化したりさらなる変異を付加した株)を作成し疾患・病態との関連性を確認・検証する。また、フローラ形成解析で得られた結果から、それらのフローラ形成(各菌株を混合)状態で動物感染実験を行い疾患・病態の再現性を確認しながら、遺伝子変異クラスター分類と胃内慢性持続感染の関連および病変との関連につき解析し評価する。
27年度の研究を継続しつつ、動物モデルによる慢性持続感染成立(ピロリ菌フローラ形成)機序の解明を行う。研究分担者の竹内らが作成した蛍光発色ピロリ菌(GFP遺伝子導入)を用いた動物実験にて感染初期からの胃内動態や慢性持続感染への変化について経時的、部位別にスコープによる観察が可能と考える。この蛍光発色は異なる遺伝子変異株や臨床分離株でも作成が可能であるため、ピロリ菌の遺伝子変異と感染率、初期感染成立に必要な遺伝子変異および疾患・病態関連性の解析も可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果について、発表段階に至らなかったため国際学会への出張が実現しなかった。 また、購入予定であった消耗品を購入しなかった
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、国際学会での発表を予定し演題応募を行っている。 また消耗品は、28年度に購入、使用予定である。
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