研究課題/領域番号 |
15K08954
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
篠村 恭久 札幌医科大学, その他部局等, 名誉教授 (90162619)
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研究分担者 |
能正 勝彦 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10597339)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食道癌 / ゲノム / エピゲノム / ESD |
研究実績の概要 |
内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection, 以下ESD)で完全一括切除された多症例の早期食道癌と外科的に切除された進行癌症例を研究対象とする。それらの臨床検体から抽出したDNAやRNAを利用し、ゲノム・エピゲノム異常を網羅的に解析。同定された有望な分子をリスク診断や標的治療のターゲットにすることで、新たな食道癌の治療方法の開発を目指す。平成27年度は以下の研究成果を残すことができたので報告する。
1)80例の早期食道癌の臨床検体(ホルマリン固定標本)からのDNAとRNAの抽出は成功した。遺伝子変異解析の結果、KRAS(codon12/13/61/146)遺伝子変異は7%、BRAF(codon 600)遺伝子変異は0%、PIK3CA(exon 1/9/20)遺伝子変異は14%、NRAS(codon 12/13/61)遺伝子変異は0%であった。 2)エピジェネティックな異常に関しては、MLH1メチル化は5%、CDKN2Aメチル化は40%、RUNX3メチル化は23%、RASSF2メチル化は10%で認められた。ゲノムワイドDNAメチル化の指標となるLINE-1メチル化やIGF2 DMR0メチル化は食道正常粘膜と比べて有意に低値であった(P < 0.0001)。 3)食道癌におけるmicroRNA-21やmicroRNA-31と遺伝子変異やエピジェネティックな異常との関連を検討したが、それらの発現と有意に相関するメチル化マーカーは認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子変異やエピジェネティックな異常、またmicroRNA解析は順調に進んでいる。早期食道癌の臨床検体の収集が当初よりもやや遅れているが、次年度で目標症例数に近づける予定。
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今後の研究の推進方策 |
今回の検討で食道癌は早期の段階でKRASやPIK3CAなどの遺伝子変異をきたすこと。また同様にエピジェネティックな異常も認められることが明らかとなった。microRNA-21やmicroRNA-31は遺伝子変異やエピジェネティックな異常との相関は認められなかった。よって食道バレット腺癌では他のmicroRNAがジェネティック、エピジェネティックな異常に関わっている可能性があることから、それらを同定するために網羅的なアレイ解析も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
microRNAに関してはApplied Biosystems社、DNAメチル化解析はAgilent Technologies社のアレイキットをそれぞれ使用し、ヒストン修飾はActive Motif 社のChIP-seqのキットを用いて行う。それらのキットを購入する必要があるため。また受託サービスを利用して次世代シークエンサーによるエクソーム解析でSNPや疾患関連遺伝子も検討する予定もあり、その費用が必要なため。
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次年度使用額の使用計画 |
一括切除された早期食道癌組織のFormalin-Fixed Paraffin-Embedded(FFPE)標本からDNAとRNAを抽出。microRNAやDNAメチル化解析はアレイキットをそれぞれ使用し、ヒストン修飾はActive Motif 社のChIP-seqのキットを用いて行う。また次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析によるSNPや疾患関連遺伝子の検索を行い、網羅的解析によって食道癌の発生初期の分子異常を明らかにする。
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