研究課題
Helicobacter pylori (H. pylori)感染に伴った各腺管の分化異常の所見は、胃底腺と幽門腺の腺の発生分化を考える上で重要な役割を果たすと考えられる。H. pylori感染によって慢性萎縮性胃炎および腸上皮化生(intestinal metaplasia, IM)が徐々に同時に進展し、初期には胃型細胞の残存する胃腸混合型(gastric and intestinal mixed, GI) IMとして発症し、最終的には腸単独型(solely intestinal, I) IMとして認識される。胃底腺領域と幽門腺領域を比較すると、幽門腺領域ではGI-IMからI-IMとなることが多いが、胃底腺領域では、直接I-IMとなるか、偽幽門腺化生を介してGI-IMとなる。今回、H. pylori除菌によって胃粘膜がどの程度修復されるかによって検討した。除菌前後の胃腺管の変化を観察すると、胃型の腺窩上皮では、細胞の高さ、腺管の幅、Ki-67陽性細胞からなる増殖帯の広がりは除菌によって有意に改善するが、GI-IM、I-IMでは、腺管の形態に有意な改善はなく、増殖帯の広がりも改善しなかった。一方で、増殖帯にはHistone H3, serine 28 phosphorylated (H3S28ph)陽性の核分裂像が含まれるが、胃型細胞では除菌前後とも増加しておらず、GI-IM, I-IM腺管ではH. pylori感染で有意に増加したH3S28ph数は除菌によっても改善しなかった。以上より、GI-IMが除菌による不可逆的ポイントと考えられた。胃底腺、幽門腺各領域で、腺窩上皮型MUC5ACあるいは胃底腺副細胞型/幽門腺型MUC6の発現を検討したが発現の変化は明らかではなかった。今後、さらにIM進展と除菌による胃底腺および幽門腺粘膜の再生像の解析が必要と考えられた。
3: やや遅れている
ヒト胃腸上皮化生発生進展における胃底腺・幽門腺粘膜の変化を検討したが、有意な違いを見いだすのに難渋したため。
H27年度は、ヒトでの病理組織学的解析を先行させ、H. pylori除菌前後における胃底腺および幽門腺領域での変化を胃型腺管、胃腸混合型腸上皮化生腺管、腸単独型腸上皮化生に分けて検討した。慢性胃炎の進展とともに胃底腺領域で見られる偽幽門腺化生は、副細胞への分化のみならず胃底腺主細胞への分化も混在して示すことがあり、これは胃底腺発生における原始主細胞を模した異常とも考えられる。H28年度は、ヒト胃底腺および幽門腺粘膜での偽幽門腺化生と腸上皮化生進展の解析と除菌による再生像を検討し、さらにマウス胃粘膜における胃底腺および幽門腺発生分化の検討も平行して遂行の予定である。
ヒト胃腸上皮化生発生進展における胃底腺・幽門腺粘膜の変化を検討したが、有意な違いを見いだすのに難渋し、動物実験の遂行が遅れたため。
遅れていた動物実験を遂行する。すなわち、マウス胃の発生分化の段階を検討し、原始主細胞を形態的に同定する。さらに、発生段階特異的な胃底腺および幽門腺分化を司る遺伝子の単離を試みる。
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