研究課題
胃底腺型胃がんは近年増加傾向のある胃がんである。しかし、その発生メカニズムは不明な点が多い。そこで、マウス胃底腺および幽門腺の発生段階における組織発生、分化、増殖機構を検討することにより、胃底腺増生の分子メカニズムの解明を試みた。生後4, 11日齢の幼若期から49日齢成獣(Adult)までのC57BL/6Jオスマウスから胃底腺領域と幽門腺領域を採取し、組織形態を検討した。また、total RNAを抽出して、cDNA microarray解析を行った。組織学的には、幼若期は、腺窩上皮はほぼフラットで深部には胃底腺細胞集塊が確認されたが、隣接する腺管同士の境界が不明瞭であった。Adultになると、胃腺管単位の構築や胃底腺の各細胞(主細胞および壁細胞)がより明らかとなっていた。胃底腺領域で、幼若期に高値で、49日齢で有意に低下する遺伝子の中で最もその差の大きいもののひとつとしてH19、insulin like growth factor 2 (igf2)が挙げられた。H19は900倍以上の低下が見られた。既知のヒト胃がんデータベース(The Cancer Genome Atlas (TCGA))を用いた検索ではH19高値の症例は有意に予後不良であった(P<0.05)。また、IGF2は40倍以上の低下を認め、同様のヒト症例においてIGF2高値は有意に予後不良であった(P<0.05)。マウスでは、H19、igf2遺伝子はいずれも7番染色体に位置し、インプリンティングの結果、H19は母親由来のみで、igf2は父親由来のみで発現することが知られているが、発生段階におけるこれらの遺伝子発現の制御は明らかにされていない。今後、胃底腺の発生、分化、増殖におけるH19およびigf2陽性細胞の役割を検討し、胃底腺型胃がん発症機構の解明につなげたい。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Non-coding RNA Investig
巻: 2 ページ: 17
10.21037/ncri.2018.03.03
Int J Mol Sci
巻: 18 ページ: -
10.3390/ijms18081699
Cancer Med
巻: 6 ページ: 1730-1737
10.1002/cam4.1082
PLoS One
巻: 12 ページ: e0182224
10.1371/journal.pone.0182224