研究課題/領域番号 |
15K08961
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
近藤 隆 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90594870)
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研究分担者 |
大島 忠之 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00381814)
三輪 洋人 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80190833)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 過敏性腸症候群 / ホスホジエステラーゼ / 内臓知覚過敏 |
研究実績の概要 |
機能性消化管障害は、その患者が多いにもかかわらず有効な治療薬が存在せず、アンメットクリニカルニーズが高い疾患である。我々は、機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia: FD)、過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome: IBS)を代表疾患とする機能性消化管障害に関する研究を一貫して行っており、その中で、IBS病態類似モデルマウス、あるいはIBS病態類似モデルラットを使用した病態メカニズムの解明に取り組んでいる。現段階での成果としては、①新生仔期の消化管刺激が成長後の大腸において痛覚過敏を生じるIBSマウスもしくはIBSラットを作成した。②IBSラットの大腸粘膜組織内にはコントロールと比べ、明らかな炎症所見が見られないにも関わらず消化管痛覚過敏を生じていることを確認した。③IBSマウスにおいて、腸管を支配する神経の細胞体が存在する後根神経節(Dorsal root ganglion: DRG)内で,コントロールと比べ、ホスホジエステラーゼ2A (PDE2A) が有意に上昇していることを見いだした。④そのPDE2Aの阻害薬を前投与することにより大腸の痛覚過敏が抑制されることを見出した。 上記の結果により、機能性消化管障害の病態に、一次知覚神経内でのPDE2Aの変化が関与している可能性が示唆され、新たな治療薬のシーズとなり得ると考える。今後はIBSモデルにおいて食道や胃などの他の臓器にも内臓知覚過敏が生じているのかどうかを評価していくことに加え、機能性シスペプシアモデルの作成とそのモデルにおける分子メカニズムの評価に関し、引き続き検討を加えていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在IBSマウスとIBSラットモデルに関しては、その安定した実験モデルの作成と、内臓痛覚過敏に関する信頼性の高い評価系を確立し、上記研究実績の概要に示した結果を得ている。従って、進捗状況としては、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
IBSの病態に、一次知覚神経内でのホスホジエステラーゼの変化が関与している可能性があることから、FDラットモデルにおいても同様な変化を示している可能性がある。今後、FDモデルを作成し、その検討を加えていく予定である。さらに、IBSモデルにおいて、末梢神経内でPDE2Aに影響を与える分子、もしくはPDE2Aが影響を与える分子に関しても検討を加えていき、そのターゲット分子が、どのように内臓知覚へ影響していくかを、阻害薬を用いて検討していく予定である。また、IBSモデルにおいて食道や胃などの他の臓器にも内臓知覚過敏が生じているのかどうか、あるいはFDモデルにおいて大腸に知覚過敏が生じているかどうかを評価していくことも、同時に予定している。
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