研究課題
本研究では、BRAF変異/CIMP陽性大腸癌の発癌過程に関与する、ある特定のmiRNA―シグナル伝達経路制御機構の詳細を解明すること、さらに、それにより大腸癌における新規治療標的分子を見出すことを目的とした。また、そうしたmiRNA群と新規治療標的分子が同定されたとして、その次世代治療予測バイオマーカーとしての、血漿miRNA発現量の測定が実現可能かどうかについて探索することを目的とした。まず、申請者らは大腸癌組織200例を用いた網羅的miRNA発現解析により、BRAF変異大腸癌特異的に異常発現を示すmiRNA群を同定した(未公表)。さらに、そのmiRNA群で最も発現変化量の大きい3種類のmiRNAの内、1種類が大腸癌細胞の増殖・浸潤において癌抑制的に働くことを初めて明らかにした。次に、BRAF変異陽性、KRAS/BRAF変異陰性例に対してmiRNAの網羅的発現解析と引き続きリアルタイムRT-PCR解析を行った結果、両群間で発現の異なるmiRNAを数種類選び出した。その候補miRNAが癌遺伝子、癌抑制遺伝子の機能を有するかどうか調べるために、ヒト大腸がん細胞でoverexpression、knockdownの系を用いて、細胞増殖、浸潤・転移能を解析した結果、あるmiRNAのoverexpressionにより細胞増殖、浸潤・転移能が低下することを示し、このmiRNAが大腸がん細胞において癌抑制遺伝子としての機能を有することを示した。さらに他のmiRNA、他のアッセイ系でも機能解析を進行中である。
2: おおむね順調に進展している
申請時の計画の中での平成27年度分に関しては、概ね計画通り達成しているため。
網羅的タンパク質発現解析などによる新規miRNA標的分子の同定と新規治療標的探索等を行い、上述のmiRNA群の新規標的分子経路を探索する。
一部予定実験(網羅的タンパク質解析)の施行予定が次年度に繰り越しとなったため。
平成27年度に実施予定であった網羅的タンパク質解析を実施する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Cancer Science
巻: 106 ページ: 1722-1729
10.1111/cas.12827
Human Mutation
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