研究実績の概要 |
再発・難治大腸癌に対して血管新生阻害薬である抗VEGF抗体薬 bevacizumab (Bmab)を投与する際の、治療効果予測バイオマーカー(BM)開発を目指して以下の仮説に基づいて研究を遂行した。仮説1)Bmab投与後において、Bmab非結合のfree VEGFの血中濃度が高いとBmabの臨床的効果は認められない。2)Bmab投与前の患者血中サイトカイン、血管新生因子を網羅的に解析することによって、Bmabの効果予測BMを見いだすことができる。3)VEGFによる血管新生が癌の発育に関与している症例では、VEGFが血管内皮細胞に作用し細胞内情報伝達系が作動するので、血管内皮細胞活性化に関連する一連のmicroRNA(miRNA)が放出される。各仮説に関する検討結果を以下に記載する。 1)Bmab投与後1M、2Mのfree VEGF血中濃度はnon-responderではresponderに比較して有意に高い。一方、Bmab投与前のVEGF血中濃度と治療効果には関連性はなかった。2)化学療法導入前の血中サイトカイン、血管新生因子、全34項目をBio-Plexを用いて網羅的に解析したところ、IL-9, IL-10, IL-12 (p70), IL-13, VEGFが抽出された。これらのうち、IL-10, VEGF血中濃度の高い症例ではBmabを含む一次治療の継続期間が短い傾向にあり、また全生存期間も短かった。3)血管内皮細胞を培養し、VEGF刺激によって培養上清に放出されるmiRNAを回収し、VEGF添加前後の発現量が10倍以上上昇または低下するmiRNA(各8つおよび4つのmiRNA)を抽出した。これらのmiRNAがBmabの効果予測BMになるか否かを、患者検体を用いて現在検討中である。
|