研究課題
本研究では、ヒト消化器癌幹細胞の分化過程、非癌幹細胞の幹細胞性獲得と上皮間葉転換(EMT)の関連などに関わる分子機構の解明により、消化器癌幹細胞自体を標的にした治療法、癌の浸潤、転移を阻害する治療法の開発を目的としている。そのために、まずヒト消化器癌臨床検体(手術検体、癌性胸腹水など)にわずかに含まれる癌幹細胞を分離し、単一癌幹細胞からの安定した培養系を確立、さらにその培養幹細胞の分化とEMTを再現する過程における単一細胞レベルでの遺伝子発現・蛋白発現プロファイルの解析を行った。フローサイトメトリー(FACS)により分離されたヒト大腸癌幹細胞(EpCAM高発現, CD44陽性)を、培養によるオルガノイド形成能、免疫不全マウス移植による腫瘍形成能を幹細胞性の指標として解析した結果、EMT関連分子TWIST1の発現に強く相関して非癌幹細胞が幹細胞性を獲得することを示し、この過程にTGF-betaを介するシグナル伝達が深く関与することを明らかにした(論文投稿中)。さらに胃癌幹細胞の生成、増殖過程を分子レベルで解明するために、胃手術検体を用いてヒト正常胃組織幹細胞の候補となる細胞集団を効率よく分離し、オルガノイド培養を行い、胃組織幹細胞からの分化過程を蛍光共焦点顕微鏡にて測定した。我々が樹立した最適な培養条件下で、正常胃組織幹細胞は複数の胃粘膜構成細胞に分化することを確認し、さらに特定の遺伝子をCRISPR-Cas9により欠失させると胃印環細胞癌に類似した形態、遺伝子発現傾向を示した。これらの知見は、胃癌幹細胞の起源、および胃癌幹細胞の発生と癌細胞の増殖に強く関わる分子の同定の基盤となり、今後特にびまん型胃癌の新規治療法開発に繋がるものと期待される。
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10.1007/s10120-017-0759-9