研究課題/領域番号 |
15K08972
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
有村 佳昭 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80305218)
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研究分担者 |
永石 歓和 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30544118)
山下 健太郎 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90381269)
仲瀬 裕志 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60362498)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨髄間葉系幹細胞 / 炎症性腸疾患 / 幹細胞ニッチ |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease,IBD)は,再燃,寛解を繰り返す慢性の難治性疾患であり,腸上皮再生をもたらす根治 療法の開発が急務である.本研究は,骨髄間葉系幹細胞(cultured mesenchymal stem/stromal cells, MSC)を用いてex vivoにおいてより生理的な腸上皮幹細胞(intestinal stem cell, ISC)ニッチを人工的に再構築することを第一の目的とする.そのために,ラットISC培養技術を確立し,ニッチを構成する細胞要素としてラットMSCを利用し,非細胞要素としての細胞外基質,シグナル伝達物質,酸素飽和度などを最適化する.次に,ニッチの機能解析から新規治療標的を探索することを第二の目的とする.すなわち,ISCニッチ機能をIBDに対する再生医療へ繋ぐ新規ニッチ治療の開発が申請者の最終目標である.したがって,本研究計画では,1.ラットISC単離・培養技術の確立,2.EnteroidとMSCの共培養によるorganoidおよびニッチ再構築,および3.ニッチ(指向性)治療標的の探索の3つの研究を並行し,分担して行う.本年度,来年度は主に上記計画2,3に重点を置き研究を遂行する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスおよびヒト大腸上皮幹細胞の単離,培養技術は,すでにSato,Nakamura(TMDU法,Nat Med 2011)らにより報告されている.本研究では,これまで報告のないラットにおける大腸クリプトおよび大腸上皮幹細胞の単離・培養を確立した.つまり,Ootaniらの腸管上皮初代培養法(Nat Med 2009)とTMDU法 を組み合わせ,Transwellのゲル内にラット大腸組織のホモジネートを加えることで安定した培養が可能であることを見出した.さらに,大腸組織 ホモジネートの上清でも長期培養が可能であった.これまでの検討から,クリプト培養に必要な活性分画は,高分子のタンパクと予想された.そこで疎水性,ゲルろ過および陰イオン交換クロマトグラフィーによる粗分画・精製した.分取分画のラット大腸上皮細胞培養における生理活性の再現性を確認後,液体クロマトグラフィータンデム質量分析による同定を試みた.同定された278タンパクのうち,活性分画に多く含有されたタンパクは7つあった.このうち,パラクリン様式で作用しうるものはEP-1とGalectin-4 (Gal4) の2つのみであった.さらに,PGE2/EP-1のシグナル伝達経路を考慮し,本研究では,PGE2,Gal4に絞り込みその生理活性の再現性を確認しえた. enteroidとMSCの共培養により,MSCはenteroidの外周に張り付き(本研究ではこの状態をorganoidとして定義しenteroidと区別した),enderoidの腸上皮統合性を増強した. タンパク精製作業に予想外に時間がかかり,全体として研究の遂行にやや遅れをきたした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は,1.ラットISC単離・培養技術の確立,2.EnteroidとMSCの共培養によるorganoidおよびニッチ再構築,および3.ニ ッチ(指向性)治療標的の探索の3つの研究を並行し,分担して行う予定である.昨年度までに1.ラット大腸幹細胞培養法を確立し,その生理活性物質を同定した.2.EnteroidとMSCの共培養によるorganoidおよびニッチ再構築を確認した. 本年度は,主に上記計画の3.ニッチ(指向性)治療標的の探索を網羅的に検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
各種物品費として計上した予算額と実際の購入金額の差額として生じた次年度使用額である.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の各種物品費として適正に捻出される予定である.
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