研究課題
腫瘍血管新生は、増殖・浸潤・転移に関わる重要な機構である。がん間質内皮細胞(Tumor associated Endothelial Cell, TEC)特異的に発現亢進し、腫瘍血管新生に関わる新規遺伝子の同定を目的とした。大腸がんおよび対照非がん部の臨床検体から上皮および内皮細胞マーカーを用いて細胞を分離し、RNA-シークエンス解析を行った。TEC特異的に発現する遺伝子を抽出し、定量PCR解析および免疫組織学的染色で検証した。候補遺伝子の腫瘍血管新生における機能解析を行った。RNA-シークエンス解析からTEC特異的に発現亢進する18遺伝子を抽出した。定量RT-PCRから遺伝子Aに着目した。さらにThe Cancer Genome Atlas (TCGA)データセットを用いた解析から、遺伝子Aの発現亢進が進行大腸がんの予後不良因子であることが示された。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を大腸がん細胞株由来のtumor conditioned mediumで刺激することで遺伝子Aの発現が上昇し、遺伝子AをノックダウンすることでHUVECの増殖能およびin vitroチューブ形成能が阻害された。一方で、大腸がん細胞株はいずれも遺伝子Aを殆ど発現していなかった。また大腸がん細胞株とHUVECとをヌードマウスに共移植することで、血管新生および腫瘍形成が促進されることが知られているが、遺伝子AをノックダウンしたHUVECを大腸がん細胞と共移植した場合、xenograftの血管新生が有意に低下した。さらに大腸がん細胞をヌードマウスに移植後、マウス遺伝子Aに対するsiRNAを局所投与することでxenograftの増殖抑制効果が認められた。TECで発現が亢進している遺伝子Aを同定した。遺伝子Aは大腸がんの血管新生に重要な役割を担っており、治療標的分子となりうることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
腫瘍血管に関わる遺伝子異常を同定し、機能解析も順調に進んでいる。
新規治療薬としての有効性の検討を進める。クロマチン免疫沈降法(ChIP)-シークエンス解析を行い、下流標的遺伝子を同定する。標的遺伝子をHUVECに過剰発現させ、特異的な抗体、あるいはタグに対する抗体でChIPを行う。上記で行った遺伝子発現アレイデータを元に標的遺伝子候補を抽出し、ChIP-PCRを行うことで、ChIP実験の成否を検証する。次にChIP産物からシークエンスライブラリを作成し、Ion Protonシークエンサーを用いてディープシークエンス解析を行う。遺伝子発現アレイデータと比較することで、標的遺伝子を抽出すると共に、結合配列のモチーフ解析を行う。これにより結合配列を明らかにすることで、次に述べる化合物スクリーニング系の開発につなげることが出来る。さらに下流標的遺伝子の中から、さらに有望な治療標的を同定することも期待される。さらに治療標的としての有用性が確認された候補遺伝子産物を阻害する化合物をスクリーニングするためのスクリーニング系を確立する。候補遺伝子産物が転写因子である場合、上記の機能解析から明らかになった結合配列を組み込んだレポーターベクターを作成し、スクリーニング系を構築する。化合物ライブラリを用いてハイスループットスクリーニングを行い、リード化合物を検索する。
ほぼ予定通り使用している。
来年度の物品購入に使用
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