研究課題/領域番号 |
15K08976
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
中村 志郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50271185)
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研究分担者 |
高川 哲也 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20444614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NUDT15 / チオプリン / 遺伝子多型 / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
●患者サンプル、患者データを用いた研究(研究代表者:中村志郎) 平成27年度は当院でこれまでにチオプリン製剤の投与をうけた891名のIBD患者を対象とした。そのうち168名が投与開始後、白血球減少症を来たしていた。この168名のうち39名に対しNUDT15遺伝子の一塩基多型(p.Arg139Cys)のgenotypingを行った。また白血球減少症を来たさなかった80名に対しても同様にgenotypingを行うことができた。Yang SK (Nat Genet. 2014)が報告しているように、我々の施設でもgenotype T/Tの患者は全例白血球減少か脱毛を経験していた。Genotype C/CとC/Tの患者においても頻度および副作用の程度は低いが白血球減少を投与後晩期に認めていた。C/Tの患者は投与開始後の早期の時点では問題ないが一年以内に白血球減少を来たし薬剤投与量を減らさざるを得ない症例が多かった。またNUDT15遺伝子のSNPとチオプリンの活性代謝産物6-TGNの血中濃度の関係の検討においては、後ろ向きに過去の検査データを解析したがgenotype C/C, C/T, T/Tの3群で血中6-TGN値とgenotypeとの相関性はみられなかった。現時点ではこのNUDT15 遺伝子多型は副作用予測の強力なマーカーとなりうる結果と思われる。
●基礎医学的観点からの研究(研究分担者:高川哲也) CRISPR/Cas9 systemを用いてHEK293T cellsとJurkat cellsにおいてNUDT15欠損細胞を作製することができた。この細胞をcontrol cellsと比較しNUDT15遺伝子の機能に関する基礎実験を今後進める予定である。またNUDT15欠損細胞に野生型と変異型のNUDT15発現ベクターが取り込まれた安定発現細胞株の作製も完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進捗していると思われるが、今後解析する症例をまだまだ増やしていく必要がある。今年度genotypingできなかった症例の中には、転居や手術をされたため当院に通院されていない患者が含まれている。また来院が不定期であったり、病状が落ち着き外来受診時に採血が年に数回しか入らない症例も多い。これらの症例は順次genotypeを進めていくこととする。NUDT15遺伝子のgenotypeとチオプリンの治療効果に相関があるかも解析する予定であるが、そのためには更なる症例の集積が必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
●患者サンプル、患者データを用いた研究(研究代表者:中村志郎) 平成27年度はおもに平成26年以前に白血球減少症を来たした患者のgenotypeを進めていった。今後は平成27年、平成28年に白血球減少症を来たした患者もpick upし解析を進める予定である。最終的には白血球減少症を来たさなかった患者合計200名、来たした患者合計100名を最終目標として解析を行いたい。またNUDT15遺伝子のgenotypeとチオプリンの活性代謝産物6-TGNの血中濃度の関係の検討においては、平成27年度より多くの症例において6-TGN測定を行っていき解析できる程度の症例数を確保する予定である。
●基礎医学的観点からの研究(研究分担者:高川哲也) 今後は平成27年度に作製したNUDT15欠損細胞と野生型と変異型のNUDT15発現ベクターが取り込まれた安定発現細胞株を用いて、NUDT15遺伝子の機能および白血球減少を来たしやすくなる変異の機能解析に入りたい。遺伝子機能の解析においてはin vitroの実験でチオプリン製剤をcontrolとNUDT15欠損細胞に投与し、細胞増殖能やアポトーシスの頻度やサイトカイン産生能を比較検討する予定である。Western blottingに用いることのできるいい抗体のスクリーニングを平成27年度におこなっているので内でのNUDT15遺伝子の発現量の変化を検討することもできる。また作製した安定発現細胞株にはFLAG tagが挿入されており免疫沈降でNUDT15と会合する蛋白を探していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にgenotypingをする際に用いた試薬は使用量をメーカー推奨より大分減らしても大丈夫かをテストしできるだけのコストダウンを行った。また遺伝子機能の解析においてはwestern blotting用の抗体、realtime PCR用のprobeにコストがかかるがこれらの購入は平成28年度にまわした。次年度以降はより多くの試薬やアッセイキットの購入が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に上記の抗体などの試薬やキットの発注を行う予定である。特に基礎実験が軌道に乗ると多くの試薬やチューブなどの消耗品が必要となる予定である。
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