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2016 年度 実施状況報告書

NUDT15遺伝子多型を用いた炎症性腸疾患の個別化医療へ向けたエビデンスの確立

研究課題

研究課題/領域番号 15K08976
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

中村 志郎  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50271185)

研究分担者 高川 哲也  兵庫医科大学, 医学部, 助教 (20444614)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードNUDT15 / チオプリン / 遺伝子多型 / 個別化医療
研究実績の概要

●患者サンプル、患者データを用いた研究(研究代表者:中村志郎)
平成28年度は、11月までに集まったチオプリン製剤治療歴のある160名の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease, 以降IBD)患者のDNAを用いて遺伝子多型の解析を行った。NUDT15遺伝子のexon1に存在するp.Val18_Val19insGlyVal (SNP ID: rs554405994)とp.Val18Ile (rs186364861)、またexon3に存在するp.Arg139Cys (rs116855232)とp.Arg139His (rs147390019)の合計4つの遺伝子多型をTaqman法或いはSanger法で解析した (倫ヒ322号)。p.Arg139Hisにおいては変異のあるサンプルを認めなかった。嘔気などの消化器症状で内服中止となった11名を除く149名において内服開始後の白血球減少症と全脱毛と上記遺伝子多型との解析では、p.Arg139Cysは強い相関性を認めた(P-value<0.0001)。p.Val18_Val19insGlyValとp.Val18Ileに関しては有意差を認めなかった。よってp.Arg139Cysがチオプリン製剤の副作用予測の強いマーカーとなることが確認された。これらの結果は論文化しIntestinal research誌に投稿し受理され現在in pressの段階である。

●基礎医学的観点からの研究(研究分担者:高川哲也)
平成27年度にCRISPR/Cas9 systemを用いてHEK293T cellsとJurkat cellsにおいてNUDT15欠損細胞を作製したが、平成28年度はこれらの細胞を用いて解析を行った。NUDT15欠損細胞においてはチオプリン製剤の添加によりcontrol細胞より早期に細胞死に至る結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

●患者サンプル、患者データを用いた研究(研究代表者:中村志郎)
概ね順調に進捗していると思われる。p.Arg139Cysがチオプリン誘発性の白血球減少症と全脱毛に強く相関することは平成27年度、平成28年度の検討で確立できた。約5人に1人の割合で存在するp.Arg139Cysのヘテロ症例の副作用等の臨床経過の詳細な検討が、これらの患者のfollow upに臨床上有用で解析が望まれるがまだ十分な数が集まっていない。継続してDNAサンプルを集める必要がある。その為平成28年度はその解析をせず平成29年度に行う予定である。

●基礎医学的観点からの研究(研究分担者:高川哲也)
平成28年度はHEK293T cellsとJurkat cellsにおけるNUDT15欠損細胞を用いて細胞死に至る分子メカニズムの解明を目指したが、まだ発表できるだけの強いデータが得られていないため、ゆるやかに進捗している状況である。平成28年度は患者データの解析を優先したため多くの時間を割けなかった。

今後の研究の推進方策

●患者サンプル、患者データを用いた研究(研究代表者:中村志郎)
我々の検討では、NUDT15 p.Arg139Cysのリスクホモ症例は、ほぼ全例でチオプリン製剤開始一月前後で早期白血球減少症あるいは全脱毛を来たすため、現時点ではIBD患者においては投与を回避し他の治療法の考慮が優先される。p.Arg139Cysのヘテロ症例においては緩徐に白血球減少を来たす例が多いが、その程度や副作用をきたす時期についての検討はまだ行えておらず平成29年度に行う予定である。p.Arg139Cysのヘテロ症例のチオプリン製剤投与時の注意点等をまとめ個別化医療に使える有益な情報を目指し論文化を目標とする。

●基礎医学的観点からの研究(研究分担者:高川哲也)
平成29年度はNUDT15欠損細胞とcontrol細胞の解析を引き続き行っていくが、アポトーシス関連蛋白や、オートファジー関連蛋白の機能的変化や発現の変化を中心に解析を行い細胞死への分子メカニズムの解明を目標とする。また生理的状況下でのNUDT15の遺伝子機能も明らかにしたい。またp.Arg139CysのリスクホモあるいはヘテロのIBD患者より同意が得られれば末梢血より単核球を分離しT細胞、monocyte等でin vitroの実験を行い欠損細胞株と表現型が一致するかも確認する予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成28年度は、患者データをまとめていく過程で早期の論文化が望ましいと判断され、試薬などの消耗品を多く使う実験系は減らし、論文化に向けて必要な仕事に時間を多く費やさざるを得なかった。その為消耗品の購入費用が予想より減少した。平成29年度は試薬等の消耗品を多く使う予定である。

次年度使用額の使用計画

平成29年度は、共焦点顕微鏡やFACSなど多くの実験の計画があり試薬等を買い揃え始めている。消耗品の購入で全ての予算がなくなると予想している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] NUDT15, FTO, and RUNX1 genetic variants and thiopurine intolerance among Japanese patients with inflammatory bowel diseases2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤寿行、高川哲也、角田洋一、西尾昭宏、河合幹夫、上小鶴孝二、横山陽子、木田裕子、宮嵜孝子、飯室正樹、樋田信幸、堀和敏、池内浩基、中村志郎
    • 雑誌名

      Intestinal Research

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2018-01-16  

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