研究実績の概要 |
患者サンプル、患者データを用いた研究(研究代表者:中村志郎) 炎症性腸疾患(IBD)の治療で用いられるチオプリン製剤による重篤な副作用を予測できるNUDT15遺伝子多型においては、そのgenotypingが保険適用となる可能性がでてきた。我々は、平成29年度にさらに患者サンプルを集め、平成27年度からの総計では563名より本研究の同意書を頂くことができた。NUDT15遺伝子のexon3に存在するR139C多型(p.Arg139Cys, SNP ID: rs116855232)は、日本人で比較的頻度があり、そのgenotypingが保険適用になる可能性がある。よって平成29年度はこのR139C多型に絞り、 C/C genotypeとC/T genotypeの炎症性腸疾患患者における、チオプリン療法開始後の経過、治療成績、投与後の注意点等についてカルテより情報収集を行った。現在これらのデータを解析中で近日中に論文執筆に入る予定である。現時点でのデータでは、C/T genotypeを持つ患者では脱毛などの副作用で治療中止となる症例は多いものの、服用継続できた例ではC/C genotypeの患者より少量で治療効果がより高い結果が得られている。保険適用になった場合、日本人では5-6人に1人の割合で存在するC/T genotypeの患者をどのような用量でfollowし、どう注意していくかといった疑問が生じてくると思われ、我々の研究がそれに答えることのできる内容になるものと期待している。
基礎医学的観点からの研究(研究分担者:高川哲也) 我々が樹立したNUDT15欠損細胞株を用いて、チオプリン添加後に細胞死に至る過程でのautophagyやapoptosisの分子メカニズムを検討している。現在それに関連した新たな遺伝子の欠損細胞株の樹立を計画しており、引き続き検討を行っていく予定である。
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