研究実績の概要 |
動物実験において本年度は局所TNBS腸炎モデルラットを作成し、まずは、自己組織化ペプチド局所投与単体でのその効果を検討した。検討の結果自己組織化ペプチド局所投与のみでも良好な結果を得ている。ヒト検体においては、IBD患者での、TRPチャネルファミリー、神経ペプチド(CGRP、ADM)の白血球除去療法前後での治療反応性等との関連の検索を行った。有効群では、有意な変化を認めており今後も症例数を増やしていく予定である。それに加えてIBD患者での、TRPチャネルファミリーの発現について検討した。健常人 30名と、当院通院中の炎症性腸疾患患者 79名(潰瘍性大腸炎 45名、クローン病 34名)の末梢血単核におけるTRPレセプターの発現の有無と各パラメータとの相関について検討した。健常人、IBD患者共に末梢血単核球においてTRPレセプターを測定できた。疾患別の比較では、UCでは健常人に比べTRPV2が低く、TRPM2が高かった。CDでは健常人に比べTRPV2,TRPV3, TRPM5,で低く、TRPM2,TRPV4が高かった。活動期別では,UCではTRPV2が活動期で低く、CDではTRPV1,TRPV2,TRPM5が活動期で低かった。臨床検査値についてはUCではTRPV2と白血球数にCDではTRPV4とCRPに有意な相関がみられた。また活動性指数についてはUC,CDともに有意な相関は認めなかった。今回の検討で、末梢血中のTRPレセプターは、健常人とIBD患者で異なる特徴を有しており一部は臨床検査値と相関していた。末梢血中のTRPレセプターの役割は十分解明されておらず、今後新たな治療標的として次年度以降さらに検討していく予定である。また他施設共同研究についても早期実現可能なように計画していく。
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