研究実績の概要 |
動物実験において本年度は局所TNBS腸炎モデルラットを作成し、自己組織化ペプチド局所投与単体でのその効果を検討した。コントロールと比べ、投与7日後の潰瘍面積、腸重量は有意に減少した。現在炎症性サイトカイン等について検討しており、今後自己免疫ペプチド単独での治療効果について報告する予定である。次にヒト検体においては、基礎的な検討としてまず、健常人、IBD患者での、TRPチャネルファミリーの発現について検討した。健常人約30 名と、IBD患者 約80名の末梢血単核におけるサイトカイン、神経ペプチド、増殖因子、TRPレセプターのmRNAレベルの測定を行った。その結果、健常人、IBD患者共に末梢血単核球において、サイトカイン、神経ペプチド、増殖因子、TRPレセプターを測定できた。健常人とUC患者の比較では、UCでは健常人に比べIL-1bβ、IL-6,IL-6ST (GP130),TNF-α、ADM10,TRPV2が低く、CGRPβ、ADM1、TRPM2が高かった。CDでは健常人に比べTRPV2,TRPV3, TRPM5,で低く、TRPM2,TRPV4が高かった。次に、UCの活動性との潜在的な関連を検討するため、疾患活動スコアと、臨床検査値との相関を調べた。UCでは、臨床活動性(PMS)とADM1,ILβ,IL-10,HGF,TRPV2,ALBに有意な相関を認めた.臨床検査値については、UCではTRPV2と白血球数に有意な相関がみられた。最後に治療法とTRPレセプターとの関連について検討した。血球成分除去療法において、TRPV2では、有意差は認めなかったものの改善群で1回目のLCAP前と5回目のLCAP前で上昇傾向がみられた。末梢血中のTRP レセプターの役割は十分解明されておらず、今後新たな治療標的として検討が必要と考えられた。
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