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2015 年度 実施状況報告書

TRPA1チャネルを標的とした消化管狭窄治療薬のin vivoスクリーニング

研究課題

研究課題/領域番号 15K08978
研究機関福岡大学

研究代表者

倉原 琳 (海琳)  福岡大学, 医学部, 講師 (00341438)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード消化管線維化狭窄 / 線維芽細胞 / TRPA1 / カルシウム / コラーゲン
研究実績の概要

臓器線維化は慢性炎症に伴って臓器の機能を担う上皮組織がI型コラーゲンなどの細胞外マトリックスに置き換わる症状である。臓器線維化が進行すると最終的に臓器不全に至る。臓器不全が死に直結する肺の線維化疾患では、国内で1万人以上の患者がいる特発性肺線維症が挙げられる。消化管・肺・肝臓・皮膚などの線維化病変の進行を抑制するのにステロイドやその類似薬が広く使用されるが、その抗線維化の作用機序は未だ解明されていない。これらの線維化疾患に対して重篤な場合は外科治療を除いて有効な治療法がなく、治療薬の開発に向けた組織線維化のメカニズム解明が急がれている。
線維化をもたらす原因として、活性化した線維芽細胞が線維化部位に集積し、I型コラーゲンを大量に産生することが明らかになっています。特に、α-SMAと呼ばれる平滑筋型アクチンを発現する線維芽細胞(筋線維芽細胞)が、細胞外マトリックスたんぱく質を高発現することが知られている。筋線維芽細胞は線維芽細胞の亜種であり、消化管粘膜上皮下の部分に分布し、消化管障害の初期に種々のサイトカインや成長因子に応答して病変部へ遊走し創傷治癒に寄与する。その過剰反応が線維化に関わる。TRPA1チャネルは消化器系や呼吸器系に発現が多く認められ、温度感受性を持ち、わさび、ニンニク、マスタード、山椒、生姜などに含まれる成分で活性化される。これまでの培養細胞を用いた実験を通して、ステロイド・ピルフェニドン・グリチルリチンなどの様々な抗線維化薬が消化管線維芽細胞TRPA1チャネルを活性化して抗線維化作用を示すことが分かった。食品成分が線維芽細胞TRPA1チャネルへの影響、線維化シグナルへの作用について盲試験でスクリーニングした。現在TRPA1ノックアウトマウスを用いたin vivo実験を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々のIn vitro実験結果によると、線維芽細胞TRPA1チャネルが活性化されると、TGF下流のリン酸化シグナルが抑制され、線維化に関わるマスター転写因子であるmyocardin(MYOCD)の発現レベルを抑制することによって、1型コラーゲン・α-SMA・N-カドヘリンの発現を有意に抑制することが分かった。
福岡県生物食品研究所から、TRPA1活性化物質・またはそれに類似性を持つ食品(香辛料・果物・海産物など)エタノール抽出成分103種類の提供を受け、現在細胞レベルで、これら食品成分が消化管筋線維芽細胞TRPA1チャネルへの影響、線維化シグナルへの作用について盲試験でスクリーニングした結果について福岡大学と共同で特許申請中である。特許申請には3つの新しく発見した植物成分を届けておりますが、これ以外にも甘草のエタノール抽出成分がTRPA1チャネルを活性化して抗線維化作用を示すことがわかった。これをヒントに、グリチルリチン、グリチルレチン酸、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなどステロイド様成分がTRPA1チャネルの活性化を介して抗線維化作用を示すことをin vitroで証明した。→権利譲渡証書(304-255)発明の名称「間葉系細胞TRPA1チャネルの活性化を介した組織線維化の予防または治療」発明者:倉原琳 →福岡大学産知第10号 特願2015-229481   また、2014年に大阪大学微生物病研究所の特定非営利活動法人「発生工学研究会」に依頼してCRISPR/Casシステムを用いたTRPA1-KO(CRISPR)マウスを作製した(2016年現在に10代戻し交配済)。現在既にのノックアウトマウスを用いてin vivo実験を進めている。

今後の研究の推進方策

1.既知の報告と培養細胞を用いた予備実験のデータに基づき、TRPA1-KO(CRISPR)マウス、WTマウスを用いた腸炎線維化(TNBS投与)を作成し、組織免疫学的に消化管筋線維芽細胞のTRPA1チャネルを介する抗線維化狭窄作用の検討。WTマウスおよびTRPA1-KO(CRISPR)マウスのコントロールGroupマウス大腸の正常部位、腸炎誘発Groupマウスの炎症部位;狭窄部位の組織を採取し、MT(マッソントリクローム)染色による線維化の評価・組織上皮細胞・筋線維芽細胞の形態・局在の変化をレーザー共焦点顕微鏡による組織免疫染色法で精査する。また、組織から単離した上皮細胞、筋線維芽細胞の一次培養系を確立する。筋線維芽細胞におけるストレスファイバーの形成、EGF, TGF, PDGF, VEGF, FGFなどの増殖因子、サイトカイン・ケモカイン放出;コラーゲン・MMP・TIMP、TRPの発現の変化をデジタルリアルタイムPCRや免疫ブロットで評価する。
2.上皮間葉転換・線維芽細胞→筋線維芽細胞形質転換の現象に焦点をあて、線維化モデルマウスでTRPA1チャネルの有無が、線維化の進行への影響の評価。単離した上皮細胞・筋線維芽細胞のCa2+動態や膜電流の変化について、デジタルCa2+イメージング法やパッチクランプ法による比較検討を行い、イオンチャネルと炎症・狭窄の病態生理学的意義を探る。
3.生物食品研究所によりTRPA1を活性化する可能性のある食品成分ライブラリーから抗線維化作用があるものをin vivoスクリーニングによって作用を確認し、線維化モデルマウスの線維化の発症や進行への治療効果の検討。

次年度使用額が生じた理由

予定していた遺伝子改変動物実験について、動物の繁殖スピードが遅いため、実験スケジュールが全体的に遅延したため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

繰越分は動物実験用のものであり、2016年度に加速して遺伝子改変動物実験を完了させる予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Modulation of cardiac connexin-43 by omega-3 fatty acid ethyl-ester supplementation demonstrated in spontaneously diabetic rats.2015

    • 著者名/発表者名
      Radosinska J, Kurahara LH, Hiraishi K, Viczenczova C, Egan Benova T, Szeiffova Bacova B, Dosenko V, Navarova J, Obsitnik B, Imanaga I, Soukup T, Tribulova N.
    • 雑誌名

      Physiological Research

      巻: 64 ページ: 795-806

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Intestinal Myofibroblast TRPC6 Channel may Contribute to Stenotic Fibrosis in Crohn’s Disease2015

    • 著者名/発表者名
      Lin Hai Kurahara, Miho Sumiyoshi, Kunihiko Aoyagi, Keizo Hiraishi, Kyoko Nakajima, Midori Nakagawa, Yaopeng Hu, Ryuji Inoue
    • 雑誌名

      Inflammatory Bowel Diseases

      巻: 21 ページ: 496-506

    • DOI

      10.1097/MIB.0000000000000295.

    • 査読あり
  • [学会発表] Daikenchuto ameliorates fibrotic stenosis by activating myofibroblast TRPA1 channel2016

    • 著者名/発表者名
      Lin Hai Kurahara, Keizo Hiraishi, Yaopeng Hu, Kunihiko Aoyagi, Ryuji Inoue
    • 学会等名
      第93回日本生理学会大会
    • 発表場所
      北海道札幌市
    • 年月日
      2016-03-22 – 2016-03-24
  • [学会発表] DAIKENCHUTO, A TRADITIONAL HERBAL MEDICINE, AMELIORATES INTESTINAL FIBROTIC STENOSIS BY ACTIVATING THE MYOFIBROBLAST TRPA1 CHANNEL2016

    • 著者名/発表者名
      Lin Hai Kurahara, Keizo Hiraishi, Yaopeng Hu, Kunihiko Aoyagi, Ryuji Inoue
    • 学会等名
      Biophysical Society 60th Annual Meeting
    • 発表場所
      USA, Los Angeles, California
    • 年月日
      2016-02-27 – 2016-03-02
    • 国際学会
  • [学会発表] 消化管筋線維芽細胞におけるTRPA1チャネルを介したステロイド抗線維化作用の分子機序2015

    • 著者名/発表者名
      倉原琳、平石敬三、胡耀鵬、青柳邦彦、井上隆司
    • 学会等名
      第68回 日本薬理学会西南部会
    • 発表場所
      山口県下関市
    • 年月日
      2015-11-21 – 2015-11-21
  • [学会発表] 消化管筋線維芽細胞におけるTRPA1チャネルを介したステロイド抗線維化作用の分子機序2015

    • 著者名/発表者名
      倉原琳、平石敬三、胡耀鵬、青柳邦彦、井上隆司
    • 学会等名
      第66回西日本生理学会
    • 発表場所
      福岡県久留米市
    • 年月日
      2015-10-09 – 2015-10-10
  • [学会発表] Novel function of TRPM7 in vascular endothelium remodeling2015

    • 著者名/発表者名
      Lin Hai Kurahara, Keizo Hiraishi, Ryuji Inoue
    • 学会等名
      International sympodium : ADVANCES IN CARDIOVASCULAR RESARCH-from the bench to the patient’s bed
    • 発表場所
      Slovakia, Bratislava
    • 年月日
      2015-09-02 – 2015-09-05
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] クローン病線維化狭窄の病態形成におけるTRPチャネルの役割2015

    • 著者名/発表者名
      倉原(海)琳、住吉美保、青柳邦彦、平石敬三、井上隆司
    • 学会等名
      第57回日本平滑筋学会総会
    • 発表場所
      山口県宇部市
    • 年月日
      2015-08-26 – 2015-08-27
  • [学会発表] 消化管筋線維芽細胞TRPA1チャネルを介する抗線維化作用の分子機序2015

    • 著者名/発表者名
      倉原琳、平石敬三、青柳邦彦、井上隆司
    • 学会等名
      第57回日本平滑筋学会総会
    • 発表場所
      山口県宇部市
    • 年月日
      2015-08-26 – 2015-08-27
  • [学会発表] Anti-fibrotic effects of Daikenchuto (TU-100) are associated with intestinal myofibroblast TRPA1 channel2015

    • 著者名/発表者名
      倉原(海)琳、住吉美保、青柳邦彦、平石敬三、井上隆司
    • 学会等名
      生理学研究所 国際研究集会「TRPs and SOCs ~Unconventional Ca2+ Physiology~」
    • 発表場所
      愛知県岡崎市
    • 年月日
      2015-06-05 – 2015-06-05
    • 国際学会
  • [産業財産権] 組織線維化スクリーニング方法および抗組織線維化薬剤 ならびに機能性食品2015

    • 発明者名
      倉原琳
    • 権利者名
      福岡大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2015-229481
    • 出願年月日
      2015-11-25

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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