研究課題
我々は、TRPA1チャネルの活性化が、ステロイド、ピルフェニドンの抗線維化作用に関わることを見出した。(1)TRPA1 mRNAは、筋線維芽細胞において高度に発現され、ヒトCD患者の腸の狭窄領域において顕著にアップレギュレートされた。 (2)TNBS腸炎モデルマウスのデータからTRPA1-KOマウスの方がより重篤な炎症や線維化が観察され、炎症性細胞浸潤を伴う結腸の粘膜および粘膜下層に間質線維化を示した。野生型マウスにプレドニゾロンで1週間処置したマウスでは線維化が抑制されたのに対し、TRPA1-KOマウスでは治療効果を示さなかった。(3)ピルフェニドンおよびステロイドは、TRPA1選択的アゴニストAITCと同様に、TRPA1チャネル活性化を介してCa2+流入を惹起した。これらの化合物はまた、TGF-β誘発線維化を抑制し、InMyoFibsにおけるHSP47発現を抑制した。 (4)CD患者およびTNBSマウスの線維化部位粘膜下層にTRPA1 / HSP47-二重陽性細胞が増生した。 CD患者の狭窄領域では、多数の細胞が粘膜下層のTRPA1およびHSP47に対して免疫陽性であり、多数のコラーゲン線維が染色され、線維化マーカーが有意にアップレギュレートされていた。特に、TRPA1およびHSP47の両分子は、温度刺激だけでなく、多くの他の物理化学的刺激によっても活性化されることが知られている。この新しい抗線維化分子標的TRPA1の同定は、ステロイドおよびピルフェニドンの薬理学的作用のさらなる研究に繋がるだけでなく、異なる抗線維性薬物の相加的/相乗的効果および副作用を説明できる可能性がある。我々の知見は、炎症性腸疾患の抗炎症・抗線維化治療のための新規分子標的を示し、腸内の炎症および線維症の病態生理を明らかにする有意義な情報を提示した。本研究内容はCMGHに掲載された。
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