研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)は肝細胞に侵入し、細胞内で複製されて放出されるという生活環を形成するが、その経路については不明な点が多い。小胞輸送システムが関与していることが報告されており、その分子スイッチであるRabタンパク質ファミリーに焦点を当てて研究を行った。研究期間3年間の最終年度である平成29年度は、ウイルス産生を制御しているRabタンパク質として同定されたRab5Bの機能についてさらに解析を進めた。Rab5Bのノックダウンにより感染性HBV粒子放出が増加していたが、その原因としてエンベロープタンパクのmRNA(2.4/2.1 kb mRNA)の転写が亢進していることが明らかとなった。さらにその原因としてhepatocyte nuclear factor (HNF) 4aの核内レベルが増加していることが分かり、そのmRNAも増加していた。すなわち、Rab5Bは何らかの機序によりHNF4aの転写を制御しており、エンベロープタンパクの発現を制御していた。また、最近の研究によりHBV感染性粒子のエンベロープ形成には多胞体(MVB)が利用されていることが報告されているが、本研究ではエンベロープタンパク質のうちLHBsが小胞体(ER)から多胞体(MVB)に輸送される経路にRab5Bが関わっている可能性が示唆され、Rab5BをノックダウンするとLHBsがERに蓄積することが分かった。この蓄積したLHBsがERにおいてエンベロープ形成に関与しているものと思われ、MVBを介さない経路の存在が示唆された。この経路はライソゾームで分解されにくい、効率の良い放出経路であると考えられた。以上の結果から、Rab5BがHBV放出を制御していることが明らかとなり、その発現や活性がB型肝炎の病態と関連している可能性や、これを変化させることがウイルス感染の抑制につながる可能性が示唆された。
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Hepatology
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10.1002/hep.29785