今後の研究の推進方策 |
骨髄細胞で発現増加する肝幹細胞増殖因子として同定されたEpiregulinは新規の液性因子であり、この肝幹細胞の肝細胞方向性への分化・増殖に関わる機序について、肝細胞DNA合成能の促進作用、肝特異遺伝子の発現などの検討をさらに進める。また、Epiregulinが急性肝不全時のどのような病態と関連して発現誘導されているのか、新規動物モデルを用いてさらに検討する。大型動物ミニブタ肝障害モデルとして、ミニブタ、ゲッティンゲン種(月齢12か月以内)を用いて四塩化炭素(CCL4)を12週腹腔内反復投与し, 肝障害モデルの作成を行っている。骨髄細胞に存在するMuse細胞は遺伝子改編を伴わず、しかもあらゆる細胞に分化できる多能性を持ち, 骨髄や線維芽細胞などから得られ, 傷害臓器を認識して自発的に分化し, 組織修復が行われるという特徴を持っており、これまで肝障害・心筋障害など多くの領域でその有用性が報告されている。そこで、Muse細胞をCCL4 投与大型肝障害動物モデルに耳静脈から全身投与し、血液・生化学的検討, 病理学的に検討したところ、MUSE細胞移植後では肝細胞障害の生化学な有意差は認めないが, 生合成指標であるアルブミンはMuse群で早期に改善した。このモデルにおいて、今までの研究で明らかとなったFGF2やEpiregulinを含む肝幹細胞の再生促進因子の動態を肝組織や血清を用いて解明し、これらが肝再生に有用である因子であることを明らかにする。
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