研究実績の概要 |
肝不全に対する細胞療法を発展させるため、骨髄細胞で発現する肝幹細胞増殖因子を同定して、それらの肝再生に対する役割を見いだすことを目的に研究を行った。肝前駆細胞の分化や増殖を促進させる増殖因子として、ラット骨髄細胞と肝前駆細胞の共培養によりFGF2とEpireglinが明らかとなった。Epireglinは、EpCAM陽性肝前駆細胞の肝細胞方向性への分化誘導ならびに肝前駆細胞の増殖能の増加に関与し、C57BL/6マウスに0.1%3,5-dietoxy-1,4-dihydrocollidine(DDC)を含む飼料を与えて作成した肝障害モデルでは、肝前駆細胞で構成された偽胆管周囲の間葉系細胞を含むstem-cell nicheで発現し、肝障害の進行程度に応じて遺伝子発現量ならびに蛋白発現量が増加した。Epireglinは、肝前駆細胞の肝細胞への分化誘導ならびに肝前駆細胞の増殖に関与していることが示された。また、臨床例において、急性肝不全、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、健常者の各々の血清を用いて、血清Epireglin値をELISA法で測定した。血清Epireglinは、肝前駆細胞の出現が肝障害の回復に寄与するとされる劇症肝炎の急性肝不全例において、他の群に比較し有意な上昇を示した。本因子の肝前駆細胞刺激因子としての重要性が確認され、骨髄細胞が重症肝障害において肝組織の修復に重要な役割の一端を担うことが示された。更に、骨髄細胞などの多臓器分化細胞が及ぼす肝再生効果を他のモデルで検討するため、新規の大型動物モデルとして、ミニブタ、ゲッティンゲン種(月齢12ヶ月以内)を用いて、四塩化炭素を12週間腹腔内投与し肝障害モデルを作成した。ブタ肝組織には線維化が確認され、多臓器分化細胞などを用いた肝再生における肝組織修復効果を検討可能な大型肝障害モデルとなり得ることが示された。
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