研究実績の概要 |
肝細胞がんは高度にヘテロ(性質の異なった細胞からなる)ながんであるが、今回がんの悪性度に関わるepithelial cell adhesion molecule(EpCAM), neural cell adhesion molecule (NCAM), delta-like 1 homolog (DLK-1), cytokeratin19 (CK19)の4種類の肝前駆細胞マーカーの発現とその重複の程度を251例の手術検体を用いて解析し明らかにした。また臨床データとの照会から手術後の肝細胞癌患者の予後に関わる独立因子としてEpCAM, PIVKA-II、年令、Child-Pugh scoreなどが関わることが分かった。更に、肝前駆細胞マーカーが複数発現している肝細胞がんは予後不良であることがわかった。肝前駆細胞マーカーが複数発現している肝細胞がんは臨床的には、従来から使用されている腫瘍マーカーであるAFPやAFP-L3を効果的に用いることで高率に予想できることもわかった。今回の研究は肝細胞がんを層別化し悪性度を意識しながら効果的に治療を行うための一つの指標になりうる研究であると考えている。例えば今回の研究で得られたデータを基盤としながら、遺伝子変異、主要なpathwayなどの解析を行い更に送別化していくことで、現在多く増えてきている分子標的薬や抗がん剤に効果をもたらす症例を選択していく基礎データになるかもしれない。またDLK-1陽性など(前駆細胞マーカーの一つ)の肝細胞がん中での発現は、肝前駆細胞マーカーの中でも最も高率に認め今後これらをターゲットとした医薬候補抗体による治療で悪性度の高い肝細胞がんへの貢献が期待される。
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