研究課題/領域番号 |
15K08996
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石上 雅敏 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90378042)
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研究分担者 |
後藤 秀実 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10215501)
山本 朗仁 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (50244083)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 急性肝不全 / 歯髄由来幹細胞 / MCP-1 / sSiglec-9 / 炎症 / 肝再生 |
研究実績の概要 |
歯髄由来幹細胞培養上清(SHED-CM)に特異的に増加している因子として、昨年度の時点でMCP-1が挙げられていたが、その他にsecreted sialic acid-binding Ig-like lectin-9 (sSiglec-9)との協調作用で、強力にM2マクロファージの誘導を起こすことで抗炎症に働いているという機序が脊髄損傷ラットモデルで示された(Matsubara Y, et al. J Neurosci 2015; 35: 2452-2464)。 そこで本年度は急性肝不全モデルにおいてもMCP-1,Siglec-9の2因子で効果を示すかの検討を行った。D-galctosamine(D-gal)誘発ラット急性肝不全モデルにおいて、上記2因子を投与することで、D-gal投与36時間後のAST/ALT値の有意な低下、TUNEL陽性細胞の明らかな減少、また反対にKi-67陽性細胞の明らかな増加が見られた。また生存率も上記2因子投与によりcontrolより明らかに改善、これはどちらか1因子の投与では見られなかった。これらのメカニズムとして、in vitro、in vivo両者においてmRNAレベルを検討すると、Arg-1、Ym-1、CD206等のM2マクロファージマーカーの上昇、またin vivoにおけるTNF-α、IL-6の炎症性サイトカインの抑制、IL-10、TGF-βの抗炎症性サイトカインの増加、またCD11b、CCR2の上昇とHGFの上昇がin vitro、in vivoで認められた。これらの効果はいin vitroにおけるCCR2 antagonistの添加でキャンセルされ、またin vivoにおけるm-Clodrosome(M2マクロファージ抑制)の投与においてもキャンセルされ、2因子投与のみでも同様の肝障害抑制、肝再生促進作用が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述2因子投与の急性肝不全モデルラットにおける効果についてはScientific Report誌(2017:7:44043)に掲載され、またこの成果についてはプレスリリースされ、中日新聞3月9日付にも掲載された。ただ、今の所現象論しか抑えられておらず、再生のメカニズム、他の急性肝不全モデルにおける汎用性、再生-炎症の相関メカニズム等解決すべき問題は残っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降に本モデルにおいて解決すべき問題点として(1)他の急性肝不全モデルにおける汎用性:現在D-galのみのモデルにおいて有効性が示されているが、これを臨床応用していくにあたり、他の急性肝不全モデル(CCl4、P.acnes+LPS、anti-Fas、Concanavalin A等)にも拡げ、前述2因子による効果、およびそれでうまく行かなかった場合に再度SHED-CMの投与を行い、その効果の検証と、もし効かない場合の別の因子の探索的検討を行う。 (2)肝再生のメカニズム:肝再生については、特に肝局所の炎症環境下においては①成熟肝細胞の分裂、増殖、②肝前駆細胞(HPC)の分裂、増殖、分化の2つの過程が働くとされている。本研究モデルでは肝細胞の再生が2因子、もしくはSHED-CMの投与において促進されることは判明しているが、いずれのメカニズムが優位に働くのかがよくわかっていないためこれらを明らかにしたい。(3)炎症-再生相関のメカニズム:急性肝不全モデルにおいては、炎症の進行と再生の抑制が一体となっているという仮説に基づいて、これら2因子、もしくはSHED-CMが炎症のどの段階を優位に抑制していくのか、また本モデルにおいてはHGFが液性因子として強く誘導されることがわかってきているが、HGFに本来備わっていると考えられる肝細胞増殖作用、肝前駆細胞の肝細胞への分化誘導作用、また抗アポトーシス作用のどの面が優位に働いているか、などを詳細に検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の異動に伴い、しばらく動物実験施設が使用できなくなり、予想より予算消費が鈍ってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は少し拡大した計画を立てているため期限内には残額は順調に消化されるものと考える。
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