研究実績の概要 |
【背景及び目的】我々は、アダプター蛋白質Grb2associated binder-1(Gab1)に着目し、様々な肝障害モデル(マウス肝線維化モデル及びマウス薬剤性肝障害モデル)において、同分子が保護的に機能していることを報告してきた(Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2015 Apr 1;308(7):G613-24. Hepatology. 2016 Apr;63(4):1340-55.)。また、前年度の検討において、肝細胞Gab1が、マウス肝幹/前駆細胞誘導法として知られる3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC)含有食餌誘導性肝障害モデルにおいて、肝幹/前駆細胞を介した肝再生を正に制御している可能性があることを、同分子の肝細胞特異的欠損マウスを用いて明らかにした。そこで、今回は、in vitro 培養系を用いて、Gab1による肝幹/前駆細胞の制御機構について検討を行った。【方法】DDC障害肝より分離されたEpCAM陽性肝幹/前駆細胞(東京大学分子細胞生物学研究所 宮島 篤先生よりご供与)を用い、Gab1に対するsiRNAを用いたノックダウン法及びアデノウイルスを用いた過剰発現系により、Gab1の肝幹/前駆細胞の増殖に対する影響をWST法により検討した。【結果】Gab1ノックダウンを施した肝幹/前駆細胞の増殖は、対照に比し有意に抑制された。逆に、アデノウイルスGab1過剰発現は、対照に比し、有意にその増殖を促進させた。【考案及び結語】前年度のマウスを用いたin vivo のデータも合わせて考えると、肝細胞Gab1が、肝幹/前駆細胞を介した肝再生過程を正に制御している可能性がある。以上より、肝細胞Gab1を標的とした重症肝不全の新規治療法の開発の可能性が示唆された。
|