研究課題/領域番号 |
15K08999
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
白羽 英則 岡山大学, 大学病院, 講師 (40379748)
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研究分担者 |
桑木 健志 岡山大学, 大学病院, 助教 (80643387) [辞退]
大西 秀樹 岡山大学, 大学病院, 助教 (30595468)
中村 進一郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (70514230)
能祖 一裕 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (10314668)
岩室 雅也 岡山大学, 大学病院, 助教 (30645403)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / Notchシグナル / 上皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
肝癌におけるNotchシグナル活性化と癌悪性化メカニズムの関連性の検討において、肝細胞癌培養細胞 Hep3B, Huh7, HLE, SK-Hep-1を用いて検討を行った。Notchシグナルの活性化が、その下流シグナル伝達分子であるNICD, HES, Hey等の活性化を介して上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)を亢進させるのみならず、肝癌の幹細胞化に関わるEpCAMの活性化を制御している事が確認できた。EMTの亢進は、細胞形態の変化、細胞移動能及びEMTの指標となるE-cadherin, N-cadherin, vimentinの変化により確認した。癌幹細胞化については、CD90, CD133, CD44, CD24, EpCAM等に対する抗体を用いたWestern blotting及びフローサイトメトリーで検討した。その結果、EpCAM発現がNotchシグナルの活性化により最も大きく変化することが判明した。また、Notchシグナルの活性化によりEpCAMを発現した細胞は、癌幹細胞としての性質を有しており、抗癌剤の耐性化に関与する蛋白群の発現が制御を受けている可能性が高いことが判明した。抗癌剤感受性試験においては、抗癌剤(5-FU, cisplatin)に対する耐性とEpCAM発現の関連も確認された。更にNotchシグナルの活性化により、抗癌剤の耐性化に関与しているMRP(Multidrug Resistance Protein)の発現が制御されていることが確認された。MRPは、MRP 1-5についてWestern blottingにより発現を検討し、いずれもNotchシグナルの活性化と相関することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最大の目的は、Notchシグナルの活性化がEMTを制御していることの確認及び、Notchシグナルの活性化と癌幹細胞化制御の関連性の確認である。研究の遂行によりNotchシグナルの活性化は、EMT制御のみならず癌幹細胞化及び抗癌剤耐性化に係わるMRPの発現まで制御している事が確認できた。以上より当該研究は、おおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.臨床検体を用いた検討: 5FUとcisplatinの併用療法施行前に、肝癌組織の採取し、標本の癌部、非癌部組織を用いて検討を行う。それぞれの組織は病理学的検討を行い、組織学的な高分化群、中分化群、低分化群の評価・分類を行う。臨床経過から抗癌剤効果が判明している症例については、その効果と関連分子発現の相関について検討を行う。a. DCP発現とNotch シグナル活性化について検討する。Jagged-1, Notch, Hey, HES, Twist, RUNX3, 癌幹細胞化マーカーの発現・活性化をWestern blot, 免疫組織染色により評価する。b. aの分子発現との関連性について、MRP1-5発現と合わせてWestern blot 及び免疫組織染色により評価する。肝組織での検討結果とin vitro実験での解析結果に解離がある場合には、分化度別の組織を用いたマイクロアレイ解析を用いて、その他の癌幹細胞化、抗癌剤耐性化関連分子の抽出を行う。 2.癌幹細胞抑制療法の検討: Hep3B, PLC, Huh7, HLE, SK-Hep1と、RUNX3発現およびTwist発現を制御した遺伝子改変肝癌培養細胞を用いる。これら細胞をγセクレターゼ阻害剤(Merck 565765) 0.1-100μMで処理し、0, 1, 3, 5日後にサンプルを回収。a.幹細胞機能の評価: Western blot, MTTアッセイ, フローサイトメトリーにより癌幹細胞機能を検証する。b.抗癌剤耐性化克服の効果: 5FU, cisplatinの効果を評価し、抗癌剤の効果増強を確認する。c. MRP発現を評価し、抗癌剤耐性化との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養などに使用する試薬を、所属教室の共同試薬を使用したため、残金が生じた。 研究分担者の大西、岩室の使用がないが、共同試薬及び他の分担者の研究費で購入した試薬で研究は遂行できている。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は、平成29年度の細胞培養試薬及び抗癌剤、抗体など実験試薬購入に使用する。
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