この1年で、レゴラフェニブ、レンバチニブといった、ソラフェニブ以外の分子標的薬が使用可能となり、さらに近い将来、ニボルマブを含めた様々な薬剤が肝癌治療に応用可能となる予定である。選択肢が増えたことで、事前に効果の薄い治療を避け、治療効果の高い薬剤を選択することが、よりいっそう重要になる。現在、薬剤の開発段階より、予後を予測するコンパニオン診断薬を見出す試みがなされるようになっており、特にサイトカインについては数多く検討されてきたが、今だ確定的なものはない。 本研究では進行肝細胞癌の治療効果予測を、サイトカイン、糖鎖発現、癌で生じている遺伝子変異を血液で捉えるリキッドバイオプシーの観点から試みた。サイトカインの治療効果予測能は十分ではなかったが、治療前のアンギオポエチン2の発現が生存率に深くかかわっていること、1次治療の効果が得られなかった時点での血中濃度が、その後の生存率にも関係していることを見出した。また、診断・予後にかかわる糖鎖の存在や、癌の不死化にかかわる遺伝子変異による予後予測の可能性を明かとし、リキッドバイオプシー診断への方向性を示した。特にこの不死化遺伝子変異の血中での検出は困難を極めたが、研究最終年度後半に、ようやく検出系の糸口がつかむことができ、現在研究を進めている。さらに、前述のごとく、新規の薬剤が使用可能になっており、これらの薬剤の効果予測も同様の方法で行う予定であり、データを集積中である。
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