研究課題
B型慢性肝炎患者に対する治療目標はHBs抗原の消失であるが、既存の核酸アナログやインターフェロンではHBs抗原の消失は得られない。抗HBs人免疫グロブリン(ヘブスブリン)は、血中に存在しているHBVは肝細胞に取り込まれる前に血流中で抗HBs抗体により中和処理し、針刺し事故後のB型肝炎発症の予防や肝移植後のB型肝炎再発・発症の抑制に実臨床で使用されているが、B型慢性肝炎患者に対しては投与されていない。B型肝炎ウイルスは肝細胞に取り込まれ増殖し肝細胞外へ分泌され再感染を繰り返していると考えられているが、再感染についての実験系が無く詳細は不明である。平成28年度の目標として、B型肝炎ウイルスの感染したヒト肝細胞を移植したキメラマウスへヘプスブリンを投与して、HBV中和による再感染予防時の血中HBs抗原、HBs抗体とウイルス量の推移について検討した。B型慢性肝炎患者血清を1x105 copy静脈内注射しB型肝炎ウイルス感染マウスの作製を行った。HBV接種後8週目にはマウス血中HBV DNA量は10.1±0.3 log copy/mLとなりプラトーに達した時点で、500IUのヘプスブリンの投与を行い、経時的にマウス血中HBV DNA量とHBs抗原、HBs抗体の測定を行った。500IU のヘプスブリン投与後ウイルス量の減少は投与後1, 3, 7日では、-1.9±0.5, -1.2±0.5, 0.2±0.5 log copy/mLとなり投与3日間は有意なウイルス量の減少を認め、HBs抗原は陰性化しHBs抗体は陽性化した。ヘプスブリン投与によりHBVを中和することでHBs抗原の陰性化を達成できる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
B型慢性肝炎患者の治療目標であるHBs抗原の消失を達成するために、抗HBs人免疫グロブリン(ヘブスブリン)の有用性が示された。
B型肝炎ウイルス感染マウスを用いて、既存の抗ウイルス薬やB型肝炎ウイルス疾患以外で臨床応用されている免疫制御薬について、薬効を評価する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
J Gastroenterol.
巻: 55 ページ: 1073-1080.
10.1007/s00535-016-1189-x