研究課題
HBVは,肝細胞に取り込まれるとゲノムDNAを含むヌクレオカプシドが細胞質から核内へ移行しcovalently closed circular DNA(cccDNA)となりウイルス複製の鋳型となる.慢性B型肝炎患者の治療薬として,核酸アナログやPEG-IFN製剤が用いられているが,cccDNAの低下は得られない.今回我々はHBV感染ヒト肝細胞キメラマウスを用いてエンテカビル(ETV)およびPEG-IFN併用治療によるcccDNA制御の可能性、およびcccDNAの制御が治療終了後のウイルス複製に与える影響について検討した.ヒト肝細胞移植マウスにHBVを接種し,血中HBV DNAがプラトーに達した後にETV,PEG-IFNを投与し,マウス血中のHBV DNA量,HBsAg,HBcrAgを経時的に測定し,マウスの肝臓内cccDNA量をreal-time PCR法を用いて定量した.ETV,PEG-IFNα2aを6週併用投与したところ,血中HBV DNAは早期に低下し,投与3-4週で検出感度以下となった.肝臓内cccDNA量は、治療前に比べ,6週投与により有意に減少した.治療終了後さらに観察した10頭のマウスのうち,3頭のマウスでは治療終了8および9週後に血中HBV DNAが再陽性化したが,4頭のマウスでは治療終了13週後まで検出感度以下が維持された.HBVDNAが再上昇したマウスでは血中のHBsAg, HBcrAgが治療終了後に上昇していた.治療終了13週後の肝臓内cccDNAは,血中HBV DNAが再陽性化したマウスに比べ,血中HBV DNAが検出感度以下を維持していたマウスでは,より低値だった.肝臓内cccDNAを十分に低下させる治療を行うことにより,治療中止後もdrug freeにて肝内HBVの増殖を制御できる可能性が示された.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Antimicrob Agents Chemother.
巻: 24 ページ: e00725-17.
10.1128/AAC.00725-17