研究課題
申請者らは、B細胞の生存、分化や活性化に関与するサイトカインであるB細胞活性化因子(B cell activating factor: BAFF)がイ ンスリン抵抗性を誘導するアディポカインであることを見出した。これまでの基礎研究の結果に基づいて、BAFFの肥満・糖尿病および脂肪肝を介した肝発癌への役割を解析することを目的として検討を行ってきた。本研究期間内には以下のことを明らかにした。①初代培養肝細胞の分離を行い、BAFF受容体が発現していることを確認した。また、 BAFF欠損マウス、BAFF受容体欠損マウスからも肝細胞分離を行った。②肝細胞に脂肪酸(オレイン酸、パルミチン酸)を添加して脂肪化を誘導し、この培養系にBAFFを添加した。C57BL/6マウス、BAFF欠損マウス、BAFF受容体欠損マウス肝細胞における脂肪合成、炎症 、酸化ストレス等の遺伝子発現に違いがみられた。とくに、BAFF欠損マウスでは脂肪合成、炎症に関与する遺伝子発現の有意な低下がみられた。③C57BL/6 マウス、BAFF欠損マウス、BAFF受容体欠損マウスに高脂肪食を12週間~52週間与えたところ、3群間で肝脂肪化に差がみられた。BAFF欠損マウスではC57BL/6マウスに比し肝脂肪化が著明に改善していた。④C57BL/6マウス、BAFF欠損マウス、BAFF受容体欠損マウスにジエチルニトロサミンを投与したのち高脂肪食を与えて肝発癌モデルを作成したところ、3群間で肝腫瘍発生率に差がみられた。BAFF欠損マウスではC57BL/6マウスに比し肝腫瘍発生が減少していた。以上から、BAFFが脂肪肝を介した肝発癌において重要な役割を果たしており、診断および治療標的となる可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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