研究課題
肝硬変患者にみられる栄養障害の中での独立した予後不良因子には体脂肪量の低下を初めとした脂質吸収障害がある。これまで申請者らは、肝硬変患者において、その栄養吸収の場である小腸粘膜に形態変化が生じていること、小腸から吸収される食事由来長鎖脂肪酸が、小腸粘膜上皮におけるカイロミクロン合成関連蛋白の発現低下によって吸収障害を起こしていることをヒト臨床研究によって明らかにした。一方、近年肝硬変患者に使用される分枝アミノ酸(以下BCAA)の小腸粘膜再生促進、粘膜保護作用など消化管機能への関与が報告されている。今回、肝硬変患者における小腸脂肪酸吸収能やそれに対するBCAAの役割、改善効果を明らかにすることを目的として研究を行った。肝硬変患者における食事由来脂肪酸(中鎖脂肪酸およびLCFA)の吸収動態の変化と肝の炎症、線維化、発癌、またインスリン抵抗性などの病態との関連を解析した。食事由来のパルミチン酸の消化吸収を前述の肝硬変の有無・線維化の程度別に調べた。非アルコール性脂肪性肝炎(以下NASH)においては脂肪酸投与後の全時間(0-360分)にわたり吸収が亢進しており、特に線維化が軽微な早期のNASH群においては、食事由来のパルミチン酸投与後早期(0-120分)に小腸よりの吸収が亢進していた。NASH患者では健常人に比べ小腸からの食事由来のパルミチン酸吸収が全体的に亢進していることが分かった。NASHにおける肝硬変・肝細胞癌への進展における脂質吸収の関与の可能性、肝硬変患者における小腸からの脂質の消化吸収の特徴のひとつを明らかにした。肝硬変患者へのBCAAを含めた各種の栄養療法の介入やその吸収動態の実際の評価に際しては、肝線維化の程度を考慮し、評価方法を選定する必要があることも本研究からも明らかにした。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
J Gastroenterol.
巻: 52 ページ: 940-954
10.1007/s00535-016-1298-6. Epub 2017 Jan 6.