研究課題
肥満人口の増加に伴って非アルコール性脂肪性肝疾患が急増し、肝臓の線維化進展の速やかな非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の増加が生じている(J Gastroenterol. 2012 ;47:586-595.)。このため10年後には肝硬変が1.3倍、肝細胞癌の3割弱がNASH由来となるのではないかと、危惧されている。NASHの予後を規定する因子としては肥満に伴う生活習慣病が最も重要であるが、無症候で慢性肝疾患が肝硬変・肝細胞癌へと進展するため肝疾患に対する配慮が不可欠である。摂食中枢に異常を有するヒトの遺伝性肥満症の一つであるMC4R欠損症でNASHが好発(J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014;58:155-159.)し、同遺伝子の欠損マウスでもNASH(Am J Pathol. 2011;179:2454-2463.)に伴う肝細胞癌が好発することに着目し、NASHからの肝発癌の分子機構を検討し、NASHからの肝発癌の抑制・予防に生かしたいと願っている。
2: おおむね順調に進展している
①(西原利治)… MC4R KO自然肝発癌モデルマウスは通常食の給餌下でも極めて強いインスリン抵抗性を示す。8週令に達すると空腹時血糖は正常であるが、野生型に比して高インスリン血症を示す。高脂肪負荷では顕著な高インスリン血症にも関わらず空腹時血糖の上昇も認められた。このような変化は20週令に至るまで持続した。また、MC4RとPPAR-αのdouble KOマウスでは通常食の給餌下では野生型に比してインスリン抵抗性が軽減されたが、20週令では野生型に比して耐糖能の低下がより顕著となり体重の減少を生じたためにインスリン感受性は野生型と同等であった。②(戸田勝巳)…8週令のMC4R KOマウスでは、既知の脂肪酸合成関連の遺伝子の発現が増強され、炎症関連遺伝子の発現も増強された。脂肪酸β酸化およびω酸化関連遺伝子群やスカベンジャー受容体の発現も継時的に増強された。③(耕﨑拓大、水田洋)…計画的にMC4R KO自然肝発癌モデルマウスの繁殖を進め、ノックアウト遺伝子のgenotypingを行い、安定的な供給に努める。また、PPAR-α遺伝子をKOすることにより、発癌抑止効果を検討するためにKO個体の集積に努めている。予備的検討では、炎症性細胞浸潤に伴いIL-6の発現亢進が認められ、このモデルにおける自然肝発癌に関与する可能性を考えている(Science 317(5834):121-124,2007)。
この実験の鍵は、いかにMC4R PPAR-a double KOマウスを確保するかにかかっているので、計画的にMC4R KOマウスの繁殖を進め、ノックアウト遺伝子のgenotypingを行い、安定的な供給に努める。MC4R KOマウスは通常食の給餌下でも極めて強いインスリン抵抗性を示した。8週令に達すると空腹時血糖は正常であるが、野生型に比して高インスリン血症を示した。高脂肪負荷では顕著な高インスリン血症にも関わらず空腹時血糖の上昇も認められた。このような変化は20週令に至るまで持続することが明らかとなった。そこで、継時的な基礎的検討の詰めは今後随時行うとして、発癌頻度を評価するための実験が時間を要するため、こちらの実験を優先して行うことにする。MC4RとPPAR-αのdouble KOマウスでは通常食の給餌下では野生型に比してインスリン抵抗性が軽減されたが、20週令では野生型に比して耐糖能の低下がより顕著となり体重の減少を生じたためにインスリン感受性は野生型と同等であることが分かった。そこで、発癌頻度を評価するための実験が時間を要するため、こちらの実験を優先して行うことにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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