研究実績の概要 |
肝癌症例における筋肉量とその予後について検討を行った。ソラフェニブ開始前と開始後早期(1~3ヶ月後)でのCTにおける臍レベルでの腸腰筋横径/身長(Transversal psoas muscle thickness:TPMT/height(mm/m))の差(pre TPMT/height-post TPMT/height)を比較するとOSについては他因子と独立して有意な相関を認めた(p=0.020)。更に、肝癌に対し肝動脈化学塞栓療法(TACE)前後での静脈血中ケトン体測定の意義,骨格筋との関連性について検討した。治療前,治療7日後の静脈血中ケトン体値推移を解析した。骨格筋の量的評価として腰椎L3レベルの骨格筋を指標としたPMI(psoas muscle index)、質的評価としてIMAC(intramuscular adipose tissue content)を解析した。Cox比例ハザードモデルを用いた多変量解析では総ケトン体比(>= 0.94, HR 3.09, 95%CI 1.11-8.57, p=0.03)が生存に寄与する因子として抽出された。また,総ケトン体比に関与する因子を多重ロジステック回帰を用いて解析したところIMAC (> -0.2745, OR 4.02, 95%CI 1.20-13.49, p=0.02),腫瘍径(> 2.2cm, OR 3.27, 95%CI 1.03-10.32, p=0.04)が上昇に寄与する因子として抽出された。TACE治療7日後の低下が鈍重な症例が見られ、これらの症例では予後が不良であり、ケトン体の低下率を確認することで予後予測が可能であった。また、治療後総ケトン体の低下には骨格筋の質が関与している可能性が示唆された。骨量についても検討を行うも肝癌の進展や予後への関与はみられなかった。
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