研究課題
本研究では、C型慢性肝炎の病態進展度による腸内細菌叢の特徴を明らかにし、腸内細菌由来の肝病態増悪因子を同定することを目的とした。本研究期間開始以前に得られた結果から、肝硬変症例と無症候性キャリア症例で腸内細菌叢構成菌種の相違が見いだされた。C型慢性肝炎患者166名(無症候性キャリア18名、慢性肝炎84名、肝硬変40名、肝がん24名)と健常者23名の腸内細菌叢をメタ16S解析で比較し、病態別に解析した結果を世界で初めて報告した(Inoue T and Tanaka Y, et al. Clin Infect Dis. in press, doi: 10.1093/cid/ciy205)。腸内細菌ゲノムDNAを抽出し、細菌ゲノムDNAを鋳型に16S ribosomal RNA遺伝子を網羅的に増幅させるPCRを行った。研究協力機関で次世代型超高速DNA シーケンサーを用いて腸内細菌叢の塩基配列を決定し、得られた塩基配列を菌叢データに変換し比較解析を行った。C型肝炎患者では無症候性キャリアからすでに腸内細菌叢の変化が見られ、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと病期が進むにつれ常在菌の占有率が低下し、構成細菌種が減り、ウレアーゼ遺伝子を持つレンサ球菌属などが異常に増えるというdysbiosisがみられた。HCV感染者では糞便のpHが上昇しており、アンモニア生産菌との関係が示唆された。統計解析の結果、糞便のpHが高い患者では有意にアンモニア生産菌が増加していることが証明され、これらの菌が腸管で尿素を分解してアンモニアを生産している可能性が考えられた。病初期からの腸内細菌叢への介入(プロバイオティクスや抗生剤など)が高アンモニア血症の予防や治療につながるとともに、C型肝炎の病態悪化を抑える可能性が期待できる。
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Clinical Infectious Diseases
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10.1093/cid/ciy205