研究課題
癌には多数の体細胞変異(ゲノム異常)だけでなく、エピゲノム異常も生じており、両者が協働して癌の表現型を形成する。本研究は、エピゲノム異常のうちでDNAメチル化とマイクロRNA(microRNA; 以下、miRNA)に焦点を当て、肝細胞癌においてプロモーター領域のDNAメチル化によって発現が抑制されているtumor suppressor miRNAを同定することを目的とする。今年度は、まず、肝細胞癌の癌部と非癌部肝組織におけるDNAメチル化レベルをメチル化アレイで網羅的に検索し、癌部で過剰なDNAメチル化が生じているプロモーター領域のCpG部位を同定した。また、同一サンプルで、miRNAアレイを用いてmiRNAの発現量を網羅的に検索し、非癌部と比べて癌部で有意に発現が上昇あるいは低下しているmiRNAを同定した。次いで、両アレイの結果を統合的に解析した。それらの結果、癌部で最も発現量が低下していたmiRNA はmiR-214とmiR-199aであった。miR-214とmiR-199aは染色体1q24.3領域に隣接して座位している。興味深いことに、癌部で最も過剰なDNAメチル化が生じていたCpG部位はmiR-214とmiR-199aの共通プロモーター領域のCpG部位であった。すなわち、miR-214とmiR-199aはDNAメチル化によって発現が消失するtumor suppressor miRNA候補であると示唆された
2: おおむね順調に進展している
肝細胞癌の癌部と非癌部肝組織におけるDNAメチル化レベルとmiRNA発現量をそれぞれアレイで解析することを終了した。そして、DNAメチル化によって発現が消失するtumor suppressor miRNA候補を同定できた。
miR-214とmiR-199aがそれぞれ標的とするmRNAとその下流のシグナル経路を解明する。具体的には、肝細胞癌の細胞株にmiR-214とmiR-199aそれぞれのmimicとinhibitorを導入し、アルゴリズム解析から標的と予想されるmRNAについて、ルシフェラーゼ・アッセイやウエスタンブロット実験で標的RNAであるかどうか検証する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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