研究課題/領域番号 |
15K09018
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 義人 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70244613)
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研究分担者 |
山口 寛二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50381950)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Apg-2 / 肝癌 / 脂肪肝炎 |
研究実績の概要 |
ヒト肝癌で高発現するApg-2の肝発癌における意義を解明するためApg-2 ノックアウトマウスを作製した。このマウスではジエチルニトロサミン誘発性の肝発癌が抑制される。また肝癌細胞株でのApg-2の抑制がアポトーシスを誘導する。そこで、Apg-2による脂肪肝炎・肝硬変に由来する肝発癌の機序を検討すべくマウス脂肪肝炎モデルを作成したところ、本マウスでは脂肪肝炎が著明に抑制されていた。以上より、Apg-2は脂肪肝炎と肝癌発症に重要な役割を果たす可能性があり、Apg-2の脂肪肝炎・肝硬変の発症、さらに、それに由来する肝発癌における意義をヒト臨床検体やマウスモデルを用いて検討している。まず、ヒト肝癌細胞株を用いたApg-2の細胞増殖、抗アポトーシス、cancer EMTに関する検討を行った。ヒト肝癌細胞株の中で比較的分化度の高いHuh-7、PLC/PR5と分化度の低いHLE、肝芽腫由来でP53 Wild typeのHepG2細胞を用いて、Apg-2のサイレンシングをsiRNAを用いて行った。Apg-2のサイレンシングがin vitroで細胞数を減少させた結果よりApg-2が癌細胞の増殖に重要であると考え、Apg-2の抗アポトーシス作用、細胞増殖作用を検討する方法として、Brduの取り込みをELISA法で測定、アポトーシスをTUNEL染色で測定、Western blotting でPCNAやcyclin D1、caspase3、caspase9、 BAX、Bcl-x、 Bcl-2、Mcl-1、pRBを検討した。さらに低酸素負荷でApg-2の発現上昇を確認し、Apg-2をサイレンシングすることでHIFで誘導されるEMT関連遺伝子であるVEGF、snail、ZEB、twist、E-cadherin、vimentin、Zo-1、n-cadherinの発現動態に与える影響も検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト肝がん検体でのApg-2の発現解析がサンプル収集のため少し予定より遅れているが、マウス肝発癌モデル、肝癌細胞株での検討はおおむね順調に進行している。 また、Apg-2ノックアウトマウスで得られたジエチルニトロサミン誘発性の肝癌において遺伝子発現解析を行っているが、野生型マウス由来の肝癌に比べてサイズが小さいため、解析に必要なサンプルの確保が困難であり、再度モデルを作成したために少し予定として遅れている。5月末にはモデルが完成するため、解析の再開が可能な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
テトラサイクリン onのシステムを用いたヒト・マウス肝癌細胞株におけるApg-2のin vivo 腫瘍形成に関する検討を行う。具体的には、テトラサイクリンonによりApg-2がサイレンシングされる機能を導入したHuh7細胞や HLE細胞、Hep1-6細胞を作成し、これまでの細胞増殖、アポトーシス、cancer EMTに関する検討の再現性を確認する。さらに、得られたcloneをヌードマウスの皮下に接種し、テトラサイクリン含有飲料水を投与する。この実験系で肝癌細胞株を用いたin vivoの腫瘍形成におけるApg-2の役割について検討できる。Cloneは肝癌細胞株ごとに3種類作成し、ヌードマウスを各5匹ずつ、コントロール水とテトラサイクリン含有水の2群に分け、合計30匹用いて行う。腫瘍サイズだけでなく、腫瘍組織における血管新生についても免疫組織学的手法などを用いて検討する。 また、Apg-2ノックアウトマウスで得られたジエチルニトロサミン誘発性の肝癌よりRNAを抽出しRNAシークエンスを行う。Apg-2ノックアウトマウスの非癌部、野生型マウスの非癌部、肝癌を比較対象とする。有意に発現に差のあった遺伝子やシグナルを絞り込み、Apg-2との関連を肝癌細胞株において検討する。さらに臨床検体においても免疫染色を用いて関連分子の発現解析を行う。最後に、最終年度であるため、学会発表及、論文作成を平成27年度より得られたデータを集計し、Apg-2の脂肪肝炎・肝硬変の発症、さらに、それに由来する肝発癌における意義とその機序を整理し行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費として計上予定であったが、学会参加旅費が招聘として取り扱われることとなり、不要となったため、差額が生じました。研究計画に大きな変更はなく、翌年度の物品費として使用する予定です。
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次年度使用額の使用計画 |
18800円の差額であり、消耗品としての物品費として使用する予定です。
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