研究実績の概要 |
ヒト肝がんで高発現するApg-2の肝発癌における役割を解明するためにApg-2ノックアウトマウスを作製し、ジメチルニトロサミンで誘発される肝発癌モデルで検討したところ、Apg-2ノックアウトマウスでは肝癌の個数、サイズの減少が確認された。また、肝癌細胞株でApg-2の抑制によりアポトーシスが誘導されることからApg-2の抗アポトーシス作用が示唆された。さらにApg-2はAMPKシグナルの抑制作用から脂肪肝形成を促進させることが判明しており、脂肪肝炎と肝癌発症におけるApg-2の役割について注目し、細胞増殖とアポトーシス、オートファジー、上皮間葉移行(EMT)におけるApg-2発現の意義を検討した。まずヒト肝癌細胞株の中から様々な分化度かつ野生または変異P53をもつ5つの細胞株HepG2, Hep3B, Huh-7, PLC/PR5, HLEを選択しApg-2のサイレンシングを行った。細胞増殖はCCK-8による細胞数同定、BrdU取り込み能をELISAにより測定、アポトーシスはTUNEL染色、Annexin-5, SubG1のFACSによる測定、P53のアセチル化の検出、オートファジーに関してはp62-NRF2, LC-3のimmnoblotによる検出、EMTは低酸素刺激によるHIF誘導を行い、snail, TGFbeta-1, twist, ZEB, VEGF, Zo-1, CDH1遺伝子の発現からbeta-cateninの核内移動について検討を行った。結果として、Apg-2は細胞周期のG2-M期を促進させることが判明し、CDK1/cyclinB1の活性化と分解に関わるkinase群に注目している。候補キナーゼを絞り込み、その分解過程におけるApg-2のE3であるStub1を介したユビキチン化促進機構について焦点を当てて研究している。
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