研究課題/領域番号 |
15K09020
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
王 挺 岩手医科大学, 医学部, 助教 (70416171)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 浸潤性肝癌 / 化学併用療法 / TGFβ |
研究実績の概要 |
平成27年度では、肝癌細胞の浸潤性へのTGF-βおよびそのシグナルの関与、また、IFNα2bの拮抗作用および分子機構について実験を行った。実験方法:1. 肝癌細胞株HepG2 に5-FUを0から30μg/mlを添加し、24時間後、生細胞測定試薬を添加し、吸光度の測定によって、細胞生存率を評価した。2. 細胞に毒性少ない5-FU濃度を確定し、HepG2細胞にこの濃度の5-FU添加し、細胞の浸潤性をmigration assay及びinvasion assay で検討した。3. 既に前の実験で確認した30μg/ml の5-FU によるTGF-βの分泌誘導実験を再現し、回収した上清をTGF-β活性化処理及び5-FUの濃度希釈を行い(5-FU処理上清)、細胞に添加し、前述と同じ方法で細胞の浸潤性を検討した。4. HepG2細胞に5-FU処理上清を単独添加、IFNα2bとの混合添加を行い、24時間処理した。細胞内の TGF-β シグナル分子(TGF-βRII,SMAD2,snail,β-catenin など)およびIFNシグナル分子(IFNAR、STATなど)の発現および活性化についてWestern Blotで分析した。結果:1. 5-FUは、0.5μg/mlの濃度超える範囲で著明な細胞死を誘導した。2. 5-FUは、0.5μg/mlで細胞浸潤の誘導が認められなかった。3. 5-FU処理上清で著明な細胞浸潤が示された。4. 5-FU処理上清で細胞内TGF-βRII及びp-SMAD2の蛋白質発現が減少し、snailおよびβ-cateninへの影響が認められなかった。これに対し、IFNα2bとの混合添加では、TGF-βRII及びp-SMAD2の蛋白質発現が回復した。一方、IFNα2bによるIFNARの蛋白質発現への影響が認められなかったが、STAT-3の活性化が促進された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究では、5-FU の細胞毒性濃度範囲を確認した上に、細胞への浸潤誘導作用を検証した。また、IFN の作用機構におけるSTATの関与も確認した。より詳細な作用機構が解明されれば、進行性肝癌に対する有効な治療法の開発や有効症例の予知・選択につながると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1. HepG2 細胞をTGF-β添加により細胞浸潤の in vitro モデルを作成し、5-FU 単独、IFNα-2b との混合添加およびTGF-βR/IFNAR それぞれの阻害剤で刺激し、Adhesion/Migration assay、wound healing assay を行い、併用による EMT の発生への影響および分子機構を検討する。 2. 進行性肝腫瘍マウスモデルを用いて、5-FU およびIFN の併用による腫瘍増殖、浸潤への効果とTGF-β シグナルの制御について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、5-FUによる肝癌浸潤の実験条件を確立するため、予定された動物実験を延期し、細胞実験を先行した。このため、研究費の次年度への繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年の残額も含めて考え、研究費を以下の実験で使用する。 1.HepG2 細胞をTGF-β添加により細胞浸潤の in vitro モデルを作成し、5-FU 単独、IFNα-2b との混合添加およびTGF-βR/IFNAR それぞれの阻害剤で刺激し、併用による EMT の発生への影響および分子機構を検討する。2. 進行性肝腫瘍マウスモデルを用いて、5-FU およびIFN の併用による腫瘍増殖、浸潤への効果とTGF-β シグナルの制御について検討する。
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