平成29年度では、1.TGF-βシグナルを阻害する物質は、進行性肝癌に対する化学療法においてIFNα-2bの代替として使える可能性に関して、TGF-βの阻害剤を用いて、TGF-βによる肝癌細胞の生存作用に対し、IFNα-2bとTGF-βの阻害剤の影響を比較した。2.臨床のデータを用いまして、C型肝炎背景を持つ進行性肝細胞癌患者に注目し、5-FU/IFNα-2b併用療法で治療前後の血中TGF-βのレベルの変化および治療効果について検討した。3.これまで基礎実験および臨床のデータに基づいて論文を作成し,Cell Death Discov.誌に発表した。結果:1.コントロール細胞に比べ、TGF-βは24時間の細胞生存を低下させ、24時間から48時間の細胞増殖を抑制した。これに対し、SB525334、A83-01およびSB431542は、TGF-βによる細胞生存および増殖の影響を濃度依存的に解除した。一方、IFNα-2bは、24時間添加で、TGF-βによる細胞生存の影響を解除したが、48時間の処理でTGF-βによる細胞増殖の抑制を著明に促進した。2. C型肝炎背景を持つ進行性肝細胞癌患者は、治療後症状改善例(n=10)群と不応例群(n=7)では、 治療後TGF-βの血中濃度が治療前に比べ、すべて低下し、群間有意差は認められなかった。考察: IFNα-2bの代替としてTGF-βの阻害剤の選択に対し、または、血中TGF-βレベルは、治療効果の評価及び予後因子になる可能性に対し、更なるの検討が必要であると考えられる。
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