研究実績の概要 |
本年度は、C57BL/6に高脂肪食STHD-01を摂餌するだけでNASH様肝組織を経て、肝細胞癌が発生することが確認された。高脂肪食に抗菌剤カクテルを投与すると腸内細菌は減少し、数種のEnterococcus strainのみが腸内で生存した。STHD-01食では、脂肪酸延伸反応が進み肝内に長鎖飽和脂肪酸が多くなり炎症反応を強く惹起する一方、抗菌剤によりomega-3系脂肪酸が増加し炎症を鎮めた。胆汁酸解析によりSTHD-01食では、deoxycholate (DCA)など有害種二次胆汁酸が多かったのに対し、抗菌剤によりursodeoxycholate (UDCA)やtauro-UDCA (TUDCA)など無害種二次胆汁酸がほとんどを占めた。抗菌剤投与で残ったEnterococcusの中2strainにはDCAをUDCAやTUDCAに代謝する能力があった。肝内タンパク質発現を解析するとmTORのリン酸化が亢進しており、cholate, chano-DCA, DCAの中ではDCAにmTOR活性能が有意に高かった。また、抗生物質によりNrf2, NAD+, NADP+の発現、GSH/GSSG比が有意に高く抗酸化活性が亢進していた。 全体を通じて、HCV産生肝細胞におけるApoA転写亢進/脂肪蓄積、Nrf2の発現亢進、miR-122の転写低下、EZH2転写亢進から、脂肪化、Nrf2, miR-122, EZH2の発現間に相関があり、NASHを介した肝発癌でも同様の病態機序が働いていることが想定されin vivoにおけるNASH発癌モデルでの検証を試みた。ApoA亢進/脂肪化に伴うNrf2発現の刺激、そして脂肪代謝の亢進でepigeneticに悪性回路が形成されると考えられた。腸内細菌の変化による胆汁酸成分の変化がこの悪性回路を断ち切る一つの方法であることが考えられた。
|