研究課題
本研究では、代謝性脂肪肝炎(metabolic steatohepatitis;MetSH)の発症・進展における肝内自然免疫系の機能的役割を詳細に解析するとともに、実験治療的アプローチの検討を行うことを目的としている。私たちはこれまでMetSモデルKK-Ayマウスにおける脂肪肝炎進行がアミノ酸グリシンの経口摂取で抑制されることを見出し報告してきた。そこで、KK-Ayマウスの耐糖能異常に対するグリシンの作用を明らかにするべく、KK-Ayマウスにコントロール食ないし5%グリシン含有飼料を1週間摂餌した後に腹腔内糖負荷試験(IPGTT)を行った。KK-Ayマウスでは糖負荷後に著明な高血糖を呈したが、グリシン摂餌群では糖負荷後の血糖上昇が有意に抑制されることが判明した。そこで、インスリン負荷試験を試みたが、インスリン負荷後の血糖値低下はグリシン投与の有無で差異を認めなかった。従って、グリシンはKK-Ayマウスの耐糖能を改善させる作用を有するも、インスリン抵抗性改善作用は明らかではなく、異なる糖代謝調節メカニズムの存在が示唆された。一方、グリシン投与時の腸内細菌叢の変化について16SrRNA遺伝子アンプリコンシークエンシングによる菌叢解析を行い、グリシン摂餌群ではプロテオバクテリアの増加など菌叢バランスの変化がみられることが明らかになった。また、肝自然免疫系の解析の一環として二重鎖(ds)RNA認識分子RIG-Iの発現の雌雄差を明らかにしてきたが、卵巣摘除マウスでは肝内RIG-I発現が低下し、さらにエストロゲン補充を行うとRIG-I発現上昇に伴い炎症性サイトカインの誘導も増強することが明らかになった。
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