研究課題/領域番号 |
15K09024
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中村 郁夫 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40251243)
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研究分担者 |
中島 利博 東京医科大学, 医学部, 教授 (90260752)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝炎 / 肝線維化 / Synoviolin |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の肝線維化に果たすSynoviolinの役割を、マウスモデルを用いた研究により解明することが本研究の目的である。Synoviolinは、共同研究者らにより関節リウマチの病態形成に重要な役割を果たしている滑膜細胞に因んだ遺伝子として、世界で初めてクローニングされたERタンパクである。NASHの動物モデルの一つとして、C57BL/6マウスに対する生後3日でのstreptozotocinの投与により1型糖尿病を起こし、さらに、生後6週から高脂肪食を与えることによりNASHを起こさせるモデルが確立されている。同モデルを用いて、Synoviolinの特異的阻害剤であるLS-102を投与することにより、Synoviolinの作用の抑制がNASHにおける肝線維化の進行を抑制できる可能性について検証する。 平成28年度は、前年度に得られた肝組織標本を用いて、病理学的な脂肪化および肝線維化の程度の評価を行い、LS-102投与群と非投与群で比較検討した。さらに、抗Synoviolin抗体を用いた免疫染色を行い検討した。その結果、脂肪化および線維化の程度においては、両群において有意な差は認められなかったが、ERタンパクであるSynoviolinはLS-102投与群で非投与群と比べて、発現の低下が示唆された。 これらの検討結果は、次年度以降の研究を進める上で有用であると考えられる。次年度は、プロトコールを一部変更し、生後6週から生後11週までLS-102を週2回投与し、生後12週に肝臓を摘出する。また、肝の線維化の評価を肉眼による定性的評価のみならず、定量的評価を加えることを検討している。その結果の解析により、LS-102の投与によりSynoviolinの作用を抑制することが、NASHマウスモデルにおける肝線維化を低下させる可能性の有無をを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応募時に記載した研究計画・方法に基づいて、C57BL/6マウスに対する生後3日でのstreptozotocinを投与により1型糖尿病を起こし、さらに、生後6週から高脂肪食を与えることによってNASHを起こさせるマウスモデルを用いた。さらに、LS-102の投与濃度、投与期間に関する検討を行い。その結果、生後6週から生後11週までLS-102を週1回投与し、生後12週に肝臓を摘出することとした。そこで得られた肝組織標本を用いて、病理学的な肝線維化の程度の評価を行い、さらに、抗Synoviolin抗体・抗Nrf2抗体などの各種抗体を用いた免疫染色を、それぞれの条件を検討した上で行い、LS-102投与群と非投与群で比較検討した。その結果、脂肪化および線維化の程度においては、両群において有意な差は認められなかったが、ERタンパクであるSynoviolinはLS-102投与群で非投与群と比べて、発現が低下していることが示唆された。さらに、抗Nrf2抗体を用いた免疫染色による検討を進めており、LS-102投与群で非投与群と比べて、Nrf2の発現が高い可能性がことが示唆された。現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の肝線維化に果たすSynoviolinの役割を、マウスモデルを用いた研究により解明することが本研究の目的である。本年度は、プロトコールを一部変更し、生後6週から生後11週までLS-102を週2回投与し、生後12週に肝臓を摘出する。また、肝の線維化の評価を肉眼による定性的評価のみならず、定量的評価を加えることを検討している。NASHマウスモデルにLS-102を投与したマウスで、生後12週において肝臓を摘出し、まず肝組織の線維化程度の評価を行う。そして、LS-102投与群と非投与群で比較検討する。この検討には、病理学的な評価(肝脂肪化、肝細胞のbalooning、肝の炎症、肝線維化の程度の評価)に加えて、線維化の定量化を試みて比較する。LS-102投与群において非投与群と比較して、線維化の抑制が認められた場合には、さらに、抗Synoviolin抗体・抗Nrf2抗体などの各種抗体を用いた免疫染色を行い、同様にLS-102投与群と非投与群の間で比較検討する。その結果の解析により、LS-102の投与によりSynoviolinの作用を抑制することが、NASHマウスモデルにおける肝線維化を低下させることを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
生後12週で摘出したマウスの肝臓を用いた病理標本における抗Synoviolin抗体・抗Nrf2抗体などの各種抗体を用いた免疫染色の条件の検討に時間を要し、標本の作成が遅れたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
NASHマウスモデルに一部修正したプロトコールでLS-102を投与したマウスで、生後12週において肝臓を摘出し、まず肝組織の線維化程度の評価を行う。そして、LS-102投与群と非投与群で比較検討する。この検討には、病理学的な評価(肝脂肪化、肝細胞のbalooning、肝の炎症、肝線維化の程度の評価)に加えて、線維化の定量化を試みて比較する。さらに、抗Synoviolin抗体・抗Nrf2抗体などの各種抗体を用いた免疫染色を行い、結果の解析を行なう。
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