研究課題
血清中に存在する分泌型miRのプロファイルの変化により肝癌の分子標的薬であるsorafenibの効果が予測可能かを検証した。sorafenib治療を受けた肝癌例のうち、3ヶ月以上PRの持続した8例(PR群)、1ヶ月目でPDと判定された8例(PD群)の治療前血清を用い、179種のmiRで、両群で差のあるものを選択した。次に53例のsorafenib治療を受けた肝癌(投与期間中央値99日、1ヶ月目の反応; PR/SD/PD=11例/22例/20例、3ヶ月以上PR又はSD持続; 16例)、及び8例の健常者の血清で、これらのmiRを定量した。179種のmiRのうち、9種のmiRでPR群とPD群の治療前血清中のmiR量に差が認められた(p=0.0109~0.0578)。validation cohortの53例の肝癌例、8例の健常者血清で解析し、miR-181a-5p及びmiR-339-5pにおいて、1ヶ月目の反応性と治療前の血清中量の間に量依存的関係が認められた(miR-181a-5; p=0.0223; PR例/SD例/PD例の中央値=2.61/3.31/3.50: miR-339-5p; p=0.0244; PR例/SD例/PD例=4.89/5.52/5.99)。3ヶ月以上のPR又はSD持続をdisease control (DC)例とし、DC、non-DC及び健常者間で血清中miR-181a-5pを定量したところ、non-DC群ではDC群、健常者群と比較して有意にmiR-181a-5p量は低値であった。sorafenibの適応であるBCLC-stage C例を対象として、多変量解析を行ない、血清miR-181a-5p量が独立して治療開始後のDCを予測し(p=0.0092,OR=0.139, 95%CI=0.011-0.658)、全生存期間に影響した(p=0.0194)。
2: おおむね順調に進展している
血清中のmiR定量は、referenceとして用うる遺伝子で確立したものがないこと、また、血清中のmiRが微量であり、再現性のある定量が困難であるという問題がある。そこで、locked nucleic acid(LNA)を用いたqPCRを用い、referenceとして血清中に安定して存在する5種のmiRを定量し、ターゲットmiRとのCq値の差(ΔCq)を定量値とするという工夫を行った。スクリーニングコホートで179種のmiRを定量スクリーニングし、9種のmiRをバイオマーカー候補として抽出した。さらに、validationのため、増幅効率の良い5種を選び、53例のsorafenib治療前の肝癌例、8例の健常者血清で解析し、miR-181a-5及びmiR-339-5pにおいて、治療後1ヶ月目の反応性と治療前の血清中量の間に量依存的関係を見いだした。測定精度の確認のため、referenceのmiRの組み合わせを変えてinter assay variationを検討し、miR-181a-5はmiR-339-5pより安定して定量できた。3ヶ月以上のPR又はSD持続をdisease control (DC)例とし、DC、non-DC及び健常者間で血清中miR-181a-5pを定量したところ、non-DC群ではDC群、健常者群と比較して有意にmiR-181a-5p量は低値であった。さらに、一般的なsorafenibの適応であるBCLC-stage C例を対象として、単変量で有意差のあった肝外転移の有無、血清DCP値、血清miR-181a-5量を用いて多変量解析をおこなったところ、血清miR-181a-5p量が独立して治療開始後のDCと全生存期間に影響した。上記の結果を得たため、おおむね順調な進捗状況であると判断した。
miR-181a-5pがsorafenibの治療効果と関連する機能的側面の検討も加える。公開データベースの検索により、miR-181a-5pはHGF受容体であるc-Metをターゲットとすることが明らかになっている。そこで、miR-181a-5pの発現量が少ない症例ではc-Metを介したシグナルが、sorafenib抵抗性の誘因になっている可能性を考え、肝癌組織で、miR-181a-5p、c-Metの発現とsorafenib治療効果との関連を検討する。また、sorafenib抵抗性肝癌細胞株、sorafenib感受性肝癌細胞株より、miR-181a-5p、c-Met発現と、c-Met下流シグナルの変化を検討する。
本アッセイ系の測定精度の確認のため、referenceのmiRの組み合わせを変えてinter assay variationを検討したが、数種のreferenceのmiRの組み合わせを変えたリアルタイムPCRの確立に時間がかかり、発注が遅れたことが原因で次年度使用額が生じた。
上記のアッセイに必要な試薬類や、referenceに用いる種々のlocked nucleic acid(LNA) primerは、すでに次年度の早期に納品される予定である。
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すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (3件)
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