研究課題
肝星細胞を含む肝類洞壁細胞は、肝臓病進展のみならず肝発癌微少環境形成に重要な役割を果たすが、細胞内遊離コレステロール蓄積は、細胞外コレステロールレベルとは独立した形で、肝類洞壁細胞性状変化を引き起こしそれらの病態を修飾する。我々は、各肝類洞壁細胞の遊離コレステロール蓄積が、NASH・肝線維化・肝臓癌の病態機序に及ぼす役割を詳細に解析し、併せて細胞老化との相関も明らかにすることを目的としている。ABCA1により、肝星細胞から遊離コレステロールが排出される。実際に、ABCA1欠損マウスでは、肝星細胞に遊離コレステロールが蓄積することを我々は確認した。まず我々は、野生型マウスとABCA1欠損マウスとに、24週間高脂肪食を摂餌させることにより、非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。また、野生型マウスとABCA1欠損マウスとを、12週間のメチオニン・コリン欠損食摂餌モデルや、22週間のコリン欠乏食摂餌モデルに供することによっても、非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。これらの非アルコール性脂肪肝炎モデルで、ABCA1欠損による肝星細胞の遊離コレステロール蓄積が、脂肪肝・肝障害・肝臓線維化を含む肝臓病態に及ぼす影響について、組織学的・血清学的に現在評価検討し、詳細な解析を施行中である。これらの非アルコール性脂肪肝炎モデルでは、ABCA1欠損による肝星細胞の遊離コレステロール蓄積が、肝星細胞のTLR4シグナル増強を介して病態に関与する可能性が示唆されるデータが得られている。また、肝臓癌モデルを作成し(生後2週間でDEN投与、その後高脂肪食を摂食させるモデル)、肝臓癌病態に及ぼす影響についても詳細な解析を施行中である。さらに細胞老化と遊離コレステロール蓄積の病態に及ぼす影響についても、同様の解析を施行し、その詳細を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、主にABCA1欠損マウスを用いた解析を施行し、順調に計画は進行している。
今後は、平成28年度の解析を進展させるとともに、細胞老化モデルを用いた解析も施行していく予定である。
本年度は、主に動物モデルの作成を中心に施行したため、使用額が予想より少なくなった。
次年度は、作成した動物モデルの解析のため、次年度使用額を使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件)
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